今月のおもちゃ
Toys of this month
「クーバリアスの動物玩具」
●クーバリアス(Kouvalias)社は、第二次世界大戦(1939-45)終結の直後、大工のジョン・クーバリアスの小さな作業場で2人の息子とともに木製玩具を作ったことから始まります。父親ジョンの死後、ニコスとアンドレア兄弟は、アテネ郊外に広い工房を持って技術を磨き、造形の洗練と品質の向上に取り組みます。やがて、1970年代にはギリシャ国内だけでなく、海外でもその名を知られるようになりました。


●当館がアメリカ合衆国ニューヨークの代理店を通じてクーバリアス社の品々を入手したのは、1980年代半ばのこと。上記リーフレットに並ぶ品々に加えて、積木としても遊べる「時計」の玩具や紐をひくと車の回転に合わせて木琴が音を立てる「リズムスニーカー」などがあります。いずれも、まろやかで重量感の造形と明るくつややかな塗装、数十年使い込んでも壊れることのない堅牢さが魅力です。1990年代から2000年代、日本皇室に関わるニュースのなかで、内親王方がクーバリアスの玩具で遊んでおられる様子を目にしたこともありました。現在、クーバリアス社の工場は、アテネの北方、オリンポス山のふもとの町・カテリニにあり、背後の山々で育ったブナを材料に、創業のころと変わらぬ姿勢で玩具製作を続けています。



●以上のようなクーバリアス玩具のなかで、今月のおもちゃに取り上げるのは「赤い仔犬」と「家鴨車」。紐をひくと、赤い仔犬は浅い球状になった4つの足がそれぞれに回転し、バネになった尻尾を振りながら前進します。一方、家鴨は、両翼を回転させながら、首をゆらゆら揺らしながら前進。このとき、家鴨の2本の足に見立てた丸い車の車軸が弓なりに付けられているため、ひょこりひょっこり上下に動き、また、本体底に音を立てる仕掛けがあるため、ガアガアと鳴き声を上げます。このような細やかな作り込みが、かわいらしい造形と相まっておもちゃに生命を吹き込んでいるのです。
(学芸員・尾崎織女)