今月のおもちゃ
Toys of this month「パガン張子のフクロウ」
ミャンマーの古都・パガンは、イワラジ川中流、首都ヤンゴンから北北西約500㎞に位置しています。11世紀にミャンマー(ビルマ)を統一したパガン王朝が、この町に都をおきました。パガン王朝のもとでは、上座部仏教が盛んに信仰され、パゴダと呼ばれる仏塔が5000基以上も建立されました。現在も広い平野に乱立するパゴダ群を訪れる人々があとを絶ちません。
中でも「アーナンダ寺院」は、ミャンマーをはじめアジア中から信仰を集める、壮麗な大寺院で、その参道筋には、張り子玩具を商う小さな店がいくつかあります。間口一間ほどの店には、黄金色のフクロウやカラフルに色づけされた象、水牛、シマウマ、キリンなどがぎっしりと詰め込まれ、参詣客がそれらを道端にずらりと並べて、お気に入りの品を選んでいる姿が見られます。
中国、インド、タイなど他のアジアの国々にも数多く張り子玩具が伝わっていますが、ミャンマーのものは特に製法が日本とよく似ています。木型に紙を張り付けて乾かし、背中を割って型を取り出します。その後、割った部分を張り合わせ、白で下塗りをしてから彩色したり、色紙などを全体に張りつけて完成させます。中には、土球を入れて「首ふり」に仕上げる作品も見られます。ミャンマーの張り子の産地は、パガンの他、首都ヤンゴンやマンダレーにもありますが、「第二次世界大戦中、ミャンマーの駐留兵に張り子師が居て、日本の木型と製法を伝えた」という話も各地で聞かれるところです。
さて、写真は、1980年代に当館が収集した黄金色のフクロウで、様々な大きさのものが作られています(大きい方が高さ約25cm)。ミャンマーにおいてフクロウは、夜も眼をランランと輝かせて、外敵や悪霊を追い払ってくれると信じられる鳥です。人々はこれを土産に持ち帰って戸口などに飾り、福を呼び寄せるのだと聞きました。細部にこだわらない大らかな造形からは、仏教国らしい穏やかさが漂ってきます。
この作品は、6月24日から開催する夏の特別展「世界の鳥の造形」でご紹介致します。