「ミルク粥を囲むユール・ニッセ」 | 日本玩具博物館

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今月のおもちゃ

Toys of this month
2021年12月

「ミルク粥を囲むユール・ニッセ」

  • 1980年代
  • デンマーク・コペンハーゲン/金属(アンチモン)・ニット・布

デンマークでは、農家の小屋の隅に「ニッセ nisse」と呼ばれる小人(妖精)が住んでいると信じられてきました。ニッセたちは粗末な灰色の上着をまとい、赤い帽子をかぶり、白い木靴を身に着けているといわれますが、人間の目には見えません。その家の猫だけが彼らの姿をみることができるのだといいます。ニッセたちは、人々へのいたずらを楽しみながら、農家の家畜の世話をしたり、夜番をしたりしながら何百年も生きて、家人の暮らしを見守り続ける大事な存在です。

デンマークのクリスマスは「ユールJul」と呼ばれます。ユールがやってくると、ニッセから受けた一年の親切に感謝して、あるいはいたずらをされないように(笑)、人々は米をミルクで煮た甘い粥(かゆ)「ライス・プディング」のひと皿を、その家のニッセのために捧げます。そうすると、クリスマスの朝、コトンと音がして、ニッセから森の木の実などが届けられるといわれます。贈り物は、「来年もここにいるよ」というメッセージ。冬至を過ぎて、新たな太陽が再生を果たすクリスマスという節目に当たって、いつも傍で見守ってくれる存在への人々の感謝と自然からの恵みの具体が交換されるのです。これこそが、クリスマス・プレゼントの本来の意味なのかもしれません。

ライス・プディングーーデンマークの家庭のレシピより、筆者が作りました。

何百年も生きるニッセには様々な年齢層があり、人形になったニッセたちは、木のスプーンをもって楽しそうにライス・プディングを囲んでいます。ユール・ニッセの姿を映す人形たちは、来たる年の豊作と幸せを連れてくるマスコットとして、今も愛され続けています。

(学芸員・尾崎織女)