今月のおもちゃ
Toys of this month「稲の女神」
日本玩具博物館のある香寺町は姫路郊外の農村部に位置し、6月ともなれば、あたり一面に水田が広がります。水田で大合唱するカエルの声を聴いていると、遠いインドネシアの農村風景が想われたりもします。
インドネシアのバリ島では、どこを訪ねても寺院や祠が目につきます。緻密な文様に埋め尽くされた石の「割れ門」をもつヒンズー寺院が島内に何万とあり、精霊をまつる小さな祠も無数にあります。人々は、それらの寺院や祠に朝夕、花や食べ物など、様々な供物をささげ、島を美しく清浄に保っています。
祭りの日には、村中に椰子の葉で作られた聖なる飾りものが登場します。精霊の依り代として、また邪悪な霊から村を守る結界を表すものとして、寺院の門の前にはたくさんの若い椰子が立てられます。高さ3メートルほどの木の先端は花弁のように細工され、日本のしめ飾りにも似た様子です。日本における竹のように、インドネシアでは椰子が様々な場面で聖なる儀式と結びついているのです。
稲の収穫祭には、ロンタルヤシを編んで、「稲の女神」と呼ばれる人形が作られます。初穂には実りをもたらす穀物霊が宿ると信じられ、これを刈り取って大切に祀ります。この時、一緒に供えられるのが稲の女神です。女神は稲の霊を形象化したものでしょうか。
画像は、祭りの露店で売られていた高さ30センチの小さな女神です。昔のものは、目鼻も描かれず、素朴で厳粛な雰囲気をもっていましたが、カラフルに色付けされた最近の作品には、儀式を終えた後は女の子の遊び相手にもなってくれそうな愛らしさがあります。
「稲の女神」は、4号館2階「世界の人形と玩具」の常設コーナーでご紹介しています。