今月のおもちゃ
Toys of this month
2008年4月
ちりめん細工「花形独楽」
江戸時代後期、安永2(1773)年に出版された玩具絵本『江都二色』(北尾重政画・大田南畝狂歌)には、当時、江戸の町で流行していた手遊び(玩具)の数々が描かれています。ある頁には、立雛や裸人形(抱き人形)とともに、花形の独楽が見えます。狂歌には、「雛は紙 小蔵(僧)ははだか 独楽はきれ おもひおもひの すがたおかしき」とあり、独楽が裂(きれ=布片)で作られていることがわかります。
画像の上部にある紅白の梅花をかたどった独楽は明治初期製です。和紙を何枚も重ねて花びらを作り、そこに縮緬を貼って平金紙で模様をつけたもの。中央に挿した細い竹軸をそっとひねると、直径2cm余の梅花がくるくる可憐に回転します。『江都二色』の花形独楽とは軸の付け方が異なっていますが、近世の薫りを伝える作品です。
梅花だけではなく、かつては桜や桃、桔梗、菊など様々な花の独楽が作られていたことは、『うなゐの友』の第四篇(清水晴風著・明治41年刊)に描かれた花形独楽のバリエーションからもわかります。『うなゐの友・全10篇』は、江戸時代後半から明治時代にかけて収集された玩具の色々が描かれた絵本です。画像の左側の4点は、こうした文献や実物資料を参考に復元制作した縮緬貼りの花形独楽です。紅白の梅花、山桜、八重桜・・・。軸をひねると、いずれの花も春風に舞い踊るかのように楽しげに回転し、雅な風情が漂います。
これらは、現在1号館で開催中の企画展「ちりめん細工とびん細工」に展示中です。