「鯛提灯と軍艦」 | 日本玩具博物館

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今月のおもちゃ

Toys of this month
2017年7月

「鯛提灯と軍艦」

  • 昭和40年代
  • 島根県出雲市・鳥取県鳥取市/紙

 かつて日本海沿岸の町々には、七夕から盆にかけての季節に子どもたちが曳き遊ぶ灯籠の玩具がありました。新潟県新発田市の「金魚台輪」や三条市の「鯛車」は有名ですが、島根県出雲市や鳥取県鳥取市にもユニークな灯籠玩具が伝承されています。
 出雲の「鯛提灯」は細い木で組んだ台に竹の骨組をほどこし、ロウソクを立てる釘を置いた後、八雲紙を張って鯛を形作ったものです。はじめに温めたロウ液で線描きし、それから赤や青、黄色の絵の具で彩色することで、ロウを引いたところが白く残されるので、鮮やかでやわらかい色調の鯛が仕上がります。
 この中にロウソクの火を点すとほんのりと温かな明かりに鯛の模様が浮かびあがって非常にきれいです。車をつけて転がすとゆらゆらとヒレが動いて不思議な生命感さえ漂うのです。「鯛提灯」は屋形船型の「じょうき」とともに今も大社町の高橋日出美さんが先代からの形と技を継承されています。
 鳥取の「軍艦」は、近代国家の基礎をつくるべく建艦に懸命になっていた明治時代のデザインで、子どもたちの軍艦への関心を表すように奇抜な造形ですが、夏の夜に灯籠を曳き遊ぶ風習自体は明治以前からみられたようです。  七夕から盆は亡き人たちの霊がこの世にもどる季節。子どもたちは、夜の集いの楽しさとともに、優しい明かりの中に目に見えない存在への敬意や畏れといった感情を体験したことでしょう。


 各地の灯籠玩具は、現在1号館で開催している「日本の祭りのおもちゃ」の「夏祭りのおもちゃ」のコーナーでご紹介しています。このコーナーの展示会期は9月19日(火)までです。