日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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今月のおもちゃ

Toys of this month
2017年6月

「葦のチター」

  • 1970年代
  • ハンガリー・ケチキメート/葦
葦のチター(ハンガリー・ケチキメート)

 
  6月11日から開催する6号館の「世界の民族楽器と音の出るおもちゃ展」の「弾く(はじく)玩具」のコーナーには、ハンガリー・ケチキメートで作られた長さ17cmほどの小さな「葦のチター」を展示します。葦の表面を薄く切り出し、2本の弦が出来たら、その弦の垂直方向に琴柱を立てるように、葦片を差し込んだ素朴なつくりで、弦を親指で弾くと、ビン、ビン♪と、かすれた小さな音が響きます。これは、自然の中で子どもたちが手作りする草花遊びにも位置付けられ、ケチキメート玩具博物館の伝承会で再現されたものです。当館の古い友人を通じて1990年代に入手しました。

 一方、「弾く楽器」のコーナーには、フィリピンに伝わる竹のチター「ズルダイ」(長さ約40cm)やナイジェリアの葦のチター「モロ」(長さ約35cm)を展示しています。ズルダイは、竹の表皮から幾本もの弦を切り出して、それぞれの弦に琴柱を立てた民族楽器、モロは、切り出し弦をつけた葦を筏状に組み合わせ、下に共鳴箱となる瓢箪を置いて演奏する民族楽器です。爪弾くと、ポロン、ポロン♪と、雑音性のあるやさしい音色が響きます。ズルダイやモロが洗練を重ねて、西洋のチターや中近東のダルシマー、あるいは、東洋の琴へと洗練され発展を遂げていくわけですから、これらは、今、演奏家が使う弦楽器の先祖にあたるものといえるでしょうか。

竹琴・ズルダイ(フィリピン)
葦の琴・モロ(ナイジェリア)

 ケチキメートの自然遊びの中で伝承される「葦のチター」は、発音の仕組自体が明確。その素朴さは民族楽器にも共通しています。大昔に人々が発見した音を出す仕組は、伝承玩具の中に保存され、また民族儀礼などに登場する楽器の中にも保存されていると考えられます。