日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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今月のおもちゃ

Toys of this month
2020年10月

「木彫彩色 ナワラの動物玩具」

  • 1990~2000年代
  • グアテマラ・ソロラ県/木

グアテマラはスペインの入植以前、マヤ文明が栄えた地。木彫彩色の動物たちが作られるソロラ県ナワラは、グアテマラの西部に位置し、標高2,500メートルを超える高原地帯にあります。マヤ系インディヘナの人々(先住民)が独自の生活文化を受け継ぎ、織物や刺繍をはじめ、美しい手工芸品を生み出す村々が点在しています。

ナワラ周辺の村では、豊かな森林を背景に、手彫りの祭壇やテーブルなどを作る傍ら、自由な発想で牛や犬、ジャガーやウサギなど、様々な動物玩具を作っています。動物たちはホワイトパインを彫刻したもので、鮮やかな彩色と文様はこの地域の織物を思わせます。色にはそれぞれに意味があり、赤は日が昇る東方を、黒は日が落ちる西方を、白は北方、黄は南方、緑は人間の大地を表すといいます。

木彫彩色の牛

なかでも、牛のおっとりとした首の傾き、生まれたばかりの仔牛がやっと立ったようで、思わず支えたくなるような長い四本足、振り上げた尾の緊張感も楽しく、手にとる者の微笑みを誘うユーモアがあります。これらはまぎれもなく現代グアテマラの造形ですが、初めて見たときには、古代エジプトの遺跡から出土した木彫彩色の牛を思い起こしました。それは、大英博物館の所蔵品で、紀元前2,500年から2,000年頃の作。高さが7センチほどで、ナワラの牛たちと同じぐらいの大きさです。

古代エジプトの遺跡から出土した木彫彩色の牛 
紀元前2500~2000年/高さ7.0cm程度(大英博物館所蔵)
Karl Gröber,『Children’s Toys of Bygone Days 1928より


文化的な背景も時代もまったく異なる両者ですが、人類が作りだす動物玩具の基本的な形は四千年以上の時をこえて変わらないことを、それぞれがそっと知らせてくれているようで、静かな感動を覚えます。
ナワラ村の動物たちは、4号館2階の常設展「世界の玩具」の中南米コーナーに展示しています。

(学芸員・尾崎織女)