今月のおもちゃ
Toys of this month
2019年4月
掛け軸雛『明治節お飾掛圖』
🌸雛人形を描いた掛け軸は、春の座敷に季節感を添えるものとして江戸時代より用いられてきましたが、立体的な人形飾りに比べ、場所をとらず、収納も簡単であることもあって、明治後期になると、地方の町々や農村部などでも盛んに飾られるようになりました。掛け軸雛は、創造性豊かに自由な発想で描かれているものが多く、立体的な人形とはまた違った楽しさがあります。
🌸現在6号館で開催中の春の特別展「雛まつり~まちの雛・ふるさとの雛」では、明治天皇と昭憲皇太后を内裏雛に見立てた珍しい掛け軸雛をご紹介しています。 掛け軸上部には明治天皇御製「いにしへの ふみ見るたびに思ふかな おのがおさむる 國はいかにと」、昭憲皇太后御歌「みがかずば 玉の光はいでざらむ ひとのこころも かくこそあるらし」が書かれ、黄櫨染(こうろぜん)の束帯姿の明治天皇と十二単に大垂髪(おすべらがし)の昭憲太后の立雛姿が描かれています。そして二段目に、三人官女が並び、三段目には、左から大久保利通、木戸孝允、西郷隆盛、乃木希典、三段目には、左から大隈重信、森有礼、伊藤博文、井上馨、菊池大麓、袴姿の福沢諭吉と思われる明治期に活躍した人物が似顔絵で描かれています。四段目以降には、明治期に流行したブリキの乗り物玩具や西洋風の一軒家、木馬の玩具とともに世界の先住民の人形が並びます。西洋文化を受け入れ、近代化を目指した「明治」という時代が、玩具と人形で象徴的に表現されています。玩具が時代を反映する資料としてもなりえる奥深さを、改めて垣間見る思いがします。