<見学レポート>きじ馬と花手箱の里~熊本県人吉~を訪ねて   | 日本玩具博物館

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学芸室から 2009.12.15

<見学レポート>きじ馬と花手箱の里~熊本県人吉~を訪ねて  

去る12月6日(日)・7日(月)、1泊2日で、スタッフと一緒に熊本県人吉市を訪ねてきました。

姫路駅から山陽新幹線→特急リレーつばめ→九州横断特急を乗り継ぎ約5時間半、人吉到着です。人吉駅に降り立つと、「きじ馬」と「椿花」のタペストリーが出迎えてくれました。年内のSL運行は終了しており、観光シーズンも過ぎていましたので訪れる人は少ないのかと思っていましたが、2両編成の列車は3分の2程度の席が埋まっていました。

人吉到着後、バスに乗り、人吉クラフトパーク石野公園へと向いました。人吉クラフトパークは市が運営されているらしく、民工芸館や鍛冶館、木工館など伝統工芸を見て、触れて、体験できる施設になっており、公園内には広場やキャンプ場も併設されているようでした。各館では体験講座が設けられており、きじ馬や花手箱の絵付け、木のお箸作り、ナイフ・包丁製作など事前に予約すると職人さんの指導のもと体験できるようになっています。

その中から、私たちは「花手箱」の絵付けを体験してきました。
花手箱は、壇ノ浦の戦いに敗れ、落ちのびた平家の一族が都の生活をしのび生活の糧として作り始めたと伝えられる木製の小箱です。後に2月のえびす市で売られるようになり、主に女の子の土産として求められていました。現在は「花手箱」という呼び名が一般的ですが、かつては「市箱(いちばこ)」「手箱」などとも呼ばれていました。
今回、ご指導下さったのは、住岡忠嘉さんでした。まずは箱を選び(白木のものと白く塗られたものがあり、どちらを選ぶかによって少し作業は異なります)、事前に下書きされた絵に沿ってアクリル絵の具で着色していきます。初めに黄色で花芯、葉脈(葉の中心部分)を描き、緑で葉を、続いて赤で花を、そして最後に黒で縁を塗ります。案内には約60分となっていましたが、出来上がりまで約2時間を要しました。私たちが訪ねたのは日曜の午後でしたがあまり訪ねる人がなく、ひっそりとしていました。観光シーズンが終わっていたこと、駅から少し離れていることが理由かと思われます。バスでクラフトパークへ向う途中工房(きじ馬・花手箱)の看板を見かけたので訪ねてみたかったのですが、時間的なことから今回は訪ねることができませんでした。この日はバスで駅へ戻り、人吉泊。

花手箱に絵付け中…白木に直接、椿の文様を描くものと、白地に彩色するものがあります。

翌日はレンタルサイクルで国宝の青井阿蘇神社や永国寺などの観光名所を巡り、前日は絵付け体験のみで時間切れとなりましたので再び人吉クラフトパークへ向かいました。郷土玩具や雛人形が展示されている展示館(伝統工芸館)を観て回り、きじ馬や花手箱を買い求めました。きじ馬は花手箱同様、落ちのびた平家の一族が生活の糧として作り始めたと伝わっています。えびす市で売られ、主に男の子の土産として求められました。頭に書かれた「大」の字は大塚地区の製作者の家へ養子に入り、その後養家を去った若者が罪滅ぼしと感謝の気持ちを込めて書くようになったといわれています。
きじ馬も花手箱も5~600円ぐらいからあり、館長が訪れた東北地方のこけしの話を思い出しました。その後、駅へと戻り人吉を後にしました。
SL運行時期や一部の通りがお雛さま一色になる2月から3月、雛まつりのころに訪れると、また違った雰囲気が味わえるのかもしれません。

左側のきじ馬2点とうずら車2点は宮原健雄氏の作
右側のきじ馬2点と花手箱は住岡忠嘉氏の作

(学芸員・笹竹亜子)

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