展示室に響く鳥の声  | 日本玩具博物館

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学芸室から 2015.05.01

展示室に響く鳥の声 

スズメたちは子育ての真っ最中

玩具博物館の周りでは今、鳥たちが子育ての真っ最中。スズメもツバメもカワラヒワもエナガもカラスも、親鳥は雛鳥たちのために生き餌を加えて忙しく飛びまわっています。愛鳥週間(5月10日~16日)のあるこの季節に合わせて、1号館では『世界の鳥の造形展』を開催中です。アジア・オセアニア、中近東・アフリカ、北米・中南米、ヨーロッパの四地域に分けて、それぞれの特徴的な鳥の造形を展示している他、ついばむ、つつく、はばたく、とびうつる、よちよち歩く……など、鳥の様子を真似て作られた玩具を集め、“動き”をテーマにグルーピングして紹介しています。

世界の鳥笛の形

世界の鳥笛のコーナーでは、一音だけを鳴らす「単音笛」、鳥笛の胸や背中などに指穴がひとつあって、カッコウ♪と鳴る「二音のカッコウ笛」、指穴が二つ以上あって音階を奏でる「オカリナ」、鳥笛の胴部に水を入れて鳥のさえずりを表現する「水笛」に分けて展示しています。
ヨーロッパにもアジアにもアメリカにも土製の鳥笛がありますが、世界のものと比較しておもしろいのは、日本の郷土玩具の鳥笛には指穴が作られないことです。日本の郷土玩具の鳥は、フクロウや鳩、鶏を題材にしたものが各地で作られており、尾羽の部分から息を吹き込み、ホウホウ♪ポウポウ♪プウプウ♪と鳴かせるのが一般的です。それに対して、ドイツやフランス、ルーマニア、ハンガリー、ウクライナ、ロシアなど、ヨーロッパの国々では、もちろん単音笛も見られますが、指穴が二つ、三つ、四つと開けられたオカリナ型が多く作られ、それらは鳥の賑やかなさえずりを表現するばかりか、メロディーを奏でる楽器を志向していることがよくわかります。
一方、日本の鳥笛の中には、ホーホケキョ!と鳴かせる竹製のウグイス笛を代表として、かつては、ヒバリやホトトギスの声をピーチクパーチク!とか、テッペンカケタカ!とか、言葉で“聴きなして”、それを音で真似る笛が作られていました。同じ鳥の声ですが、ヨーロッパの人たちは、音楽を司る右脳で聴き、日本人は言語を司る左脳で聴くと言われます。鳥笛における音楽性と言語性、この志向の違いは、このようなことと関係があるのかもしれません。

ヨーロッパの郷土玩具の鳥笛(二音笛・オカリナ)
 左からフランスの鳩の二音笛・フィンランドの鶏の二音笛・スウェーデンのアヒルのオカリナ・ドイツのアヒルの二音笛・ロシアの鶏のオカリナ
日本の郷土玩具の鳥笛(単音笛)
 左から佐賀県弓野の鳩笛・青森県弘前の鳩笛・福岡県津屋崎のふくろう笛・福岡県古博多の鶏笛

ヨーロッパの鳥笛の中には、ドイツ在住の二人の土笛コレクター――Rolf G. MariさんとAlbertE.Jünglingさん――から贈られた貴重な鳥の水笛があります。中でも、ドイツはヘッセン州Marjossで作られたもの、フランクフルト近郊で作られたもの、ウェストファーレンで作られたフクロウ、オーデンヴァルドで作られたものなどは秀逸で、民芸としての美しさとカップに水を注いだときの音色の美しさは格別です。

ドイツの鳥の水笛(カップに水を注いで吹きます)
左から、ヘッセン州の鳥の水笛・オーデンヴァルドのフクロウの水笛・ディーブルクの鳥の水笛

世界の鳥笛の音色を聴く

先日は、盲目の方々に声のビデオレターを届けるボランティア活動をなさっておられるグループの方々の訪問を受け、世界各地の鳩や鶏、フクロウ、カッコウの土笛の音、また鳥を呼ぶバードコールの音、そしてドイツの鳥の水笛の美しいさえずりをお話とともにご紹介しました。グループの方々は、録音器材を前に、と てもわかりやすく鳥笛の形と色を紹介し、私が吹きならず音色を楽しみながら録っていかれました。
子どもの手のひらに包めてしまうぐらいの小さな造形ですが、表現力に優れた鳥笛――形と色と音をもっています!――は、楽器演奏とのコラボレーションや自然の風景づくりなど、様々な場面でその力を発揮するものと思います。

5月5日(祝・火)、10日(日)、24日(日)の2時30分~、1号館展示室で、「世界の鳥笛の音色を聴く」展示解説会を開きますので、どうぞ皆さま、日時を合わせてご来館下さいませ。

(学芸員・尾崎織女)

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