日本玩具博物館の魅力を発信!2025~当館で「地域実習」を終えた学生たちからのメッセージ・その1 | 日本玩具博物館

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学芸室から 2025.12.25

日本玩具博物館の魅力を発信!2025~当館で「地域実習」を終えた学生たちからのメッセージ・その1

12月9日から13日まで、当館では今年も「地域実習」に姫路を訪問された青山学院大学コミュニティ人間科学部の学生さんたちをお預りしておりました。地域づくりの手法を学ぶ学科課程の一環で、当館においては付き添ってこられた大木真徳先生のご指導のもと、博物館の成り立ちについて館長や学芸員の話を聴いたり、日常の博物館活動を体験したり、また当館における玩具文化継承の取り組みについて意見交換を行いながら4日間を過ごしていただき、5日目には姫路市内の文化施設見学に出掛けました。その様子は本ブログでもご報告させていただきました。
実習を終えた学生さんたちには「日本玩具博物館の魅力発信」をテーマにレポートを書いていただきました。クリスマスが近づき、当館への贈りもののごとく、大木先生から8名分の文章とそれぞれが撮影された画像が届きましたので、本ブログで4回に分けてご紹介します。ぜひ、ご一読ください。まずは開催中の特別展「世界のクリスマス物語」にまなざしを向けたレポートから——(学芸員・尾崎)

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見るだけで体験できるクリスマスの暦

木村 優一(きむら ゆういち)

今、日本玩具博物館では、訪れるだけでクリスマスの暦が理解できる資料が数多く展示されています。私は、その暦の基本的な5つの流れを、おすすめの資料とともに紹介したいと思います。

1つ目は、「待降節(クリスマス・アドベント)」の始まりのコーナーから。クリスマス(降誕祭)の準備期間を待降節(アドベント)といい、今年は11月30日に始まりました。待降節が巡ってくると、常緑樹でリースを作り、4本のキャンドルを立てたアドベントキャンドルが登場します。これはクリスマスを待つ4週間を表し、日曜日ごとに1本ずつ灯りを増やして、クリスマスに臨む日々を過ごします。

4本のキャンドルを立てた燭台(ハンガリー)——第一主日から1本ずつ点すキャンドルの数を増やしていきます

2つ目のコーナーは、12月6日に祝われる「聖ニコラウスの日」です。ヨーロッパの多くの地域では、この祝日の前夜、子どもたちは聖ニコラウスからプレゼントをもらいます。聖ニコラウスは紀元後3世紀、ミュラ(現在のトルコ)で司教となって、人々の尊崇を集めた聖人です。子どもたちを愛し、貧しい人々に金貨を授けるなど、数々の伝説があります。また、地域によっては鬼と天使を連れ、お仕置き用のムチとプレゼントの両方を手にする聖ニコラウスも見られます。

プレゼントを入れた袋とお仕置きのムチをもって子どものいる家を訪問する聖ニコラウス。口からお香の煙を吐き出す仕掛けがある人形です(ドイツ・エルツゲビルゲ地方)

3つ目の暦は「冬至」で、ここでは太陽の復活とクリスマスとの関係が示されます。北半球では待降節に入ると、冬至に向かって力が弱まる太陽を元気付けようと、丸太や薪に火が放たれ、キャンドルに火が灯されます。これを表す上で、特におすすめしたいのが、ピラミッド型キャンドルスタンドです。これは火の熱によってプロペラを回転させ、季節の巡りに力を与えようとするという、太陽復活の願いが込められています。

ピラミッド型キャンドルスタンド(ドイツ・エルツゲビルゲ地方)

4つ目の暦はクリスマス・イブです。ヨーロッパの家庭では、一般に大人たちがイブ(24日)までにクリスマスツリーを完成させ、クリスマス当日に子どもたちに披露されます。クリスマスツリーは12日間のクリスマスの祝い(降誕節)が終わる1月6日の公現節(エピファニー)まで飾られます。

クリスマスイブ、子どもたちに披露されるクリスマスツリ———赤い硝子ボールのオーナメントは赤い林檎や太陽を象徴するものです(フランス・アルザス地方)

5つ目は「降誕祭から公現節」。キリスト教国では、一般にクリスマスは、年明けの1月6日の公現節まで続きます。この日は東方の三人の博士が幼子イエスのもとを訪れ、贈り物を捧げる日でもあります。

クリスマスに飾られるキリスト降誕人形「ナシミエント」(メキシコ・ハリスコ州)——トナラ焼独特の模様がきれいです
公現節(エピファニー)に飾られる東方の三人の博士—―ラクダや馬にのってベツレヘムを訪れます(ブラジル・バイーヤ州)

このように、今季の「世界のクリスマス展」では、暦とともに展示品を鑑賞し、クリスマス文化の奥行を感じることができます。


日本玩具博物館で出会った、空間を飾る麦わら細工

大関 悠吾(おおぜき ゆうご)

館内は、国内外の優れた玩具で溢れており、その一つ一つが深い歴史と文化を物語っていた。しかしながら、数ある魅力的な展示物の中で私が最も強く印象に残ったのは、学芸員である尾崎さんが製作された二つの麦わら細工のモビールであった。一つは、フィンランドの伝統的なつるし飾り「ヒンメリ」、もう一つはリトアニアの「ソダス」のデザインを取り入れたモビールである。

これらのモビールは、館内の木の梁から糸で吊るされ、空間に浮かぶように展示されていた。麦わらという自然素材のみを使用し、幾何学的な菱形や多面体を組み合わせて構成されており、光を反射して金色に輝く姿は繊細である。特に、その温かい色調と揺らぎは、 館内に設えられたクリスマスの展示物と見事に調和していた。

この時、 博物館で最も印象に残ったのが、展示物として収蔵された歴史的な玩具ではなく、学芸員の方の手による製作物であったという点に、この博物館の真髄を感じた。もちろん、世界中から集められた玩具一つ一つは、認知は低いものの価値ある玩具ばかりで、それらの魅力を発見する喜びは大きかったと言える。それでも、尾崎さんが異国の玩具の作り方やデザインを学び、それらの姿から着想を得て、自ら麦わらを組み上げ、「ヒンメリ」や「ソダス」として生命を吹き込んでいるという事実に深く感動した。

これは、単に珍しいものを展示するに留まらず、「玩具」や「工芸」の持つ創造的な精神を、学芸員自身が体現し、来館者に伝えようとしている姿勢の表れだと感じたからである。博物館は、過去の遺産を保存するだけでなく、その創造性を現代に繋ぎ、新たな価値を生み出す場でもあるということを、吊るされた麦わら細工のモビールから感じ取った。

**********その2へ続く*************

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