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blog悲しい知らせ~ローテンブルク人形とおもちゃ博物館の閉館~
●今朝、バートキッシンゲンのHillaさんから、ドイツの中世城郭都市ローテンブルク・オプ・デア・タウバーにある「人形とおもちゃの博物館」が閉館するというニュースが入ってきました。「人形とおもちゃの博物館」の開館は1980年。カタリ―ナ・エンゲルス女史が自らのコレクションを公開するために設立した博物館です。
●1994年、初めて同館を訪問した折、エンゲルス館長から博物館を開いた理由やいきさつを詳しく伺って、私は感銘を受けました。―――エンゲルス館長が人形とともに人生を歩み始めたのは、第二次世界大戦が終わった年、貧困と絶望の中で、壊れ汚れ果てた一体の人形と出合ったことがきっかけだったと話されました。石炭置場にころがっていたその人形に彼女は強く惹かれ、家に持ち帰って自らの手で修繕したとき、心の底から喜びが満ちてきたといいます。以来、戦争で粉々に破壊された町々から、少女時代の思い出をすくい上げるように、古い人形や玩具をさがし、壊れたところ、破れたところを修繕しては大切に保存することが若いエンゲルスさんにとって、苦悩の戦後を生きていく心の支えになったといいます。心に夢がないと生きられない。自分のルーツを愛さなければ生きていけない。………博物館を設立したのは、そのコレクションを社会の宝として、後世に伝えるためだとおっしゃっていました。――――
●今、彼女は80歳。あとを継ぐ方がないのが閉館の理由と伺っていますが、ロマンチック街道を代表する観光都市でもあるローテンブルク市は、彼女の仕事を援助できなかったのでしょうか?博物館の所蔵品は、今週、オークションにかけられると言います。エンゲルス・コレクションがばらばらになっても、せめて、愛してもらえる人のもとに託されれば…とお考えになったのでしょうか。人形や玩具が人間にとってどれほど大切なものかを伝えていきたいときらきらした瞳で話しておられたエンゲルスさんの様子が目の前に立ちあがり、その心中を想うと、胸が痛いです……。
●このような施設が社会に守られ、受け継がれていくことは、ドイツというクラフト王国、おもちゃ王国においても、難しいことなのですね……。
下の画像は、人形とおもちゃの博物館のコレクションです。
(学芸員・尾崎織女)
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