「木の実のこま」 | 日本玩具博物館

日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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今月のおもちゃ

Toys of this month
2013年10月

「木の実のこま」

  • 1980~2010年代
  • ブラジル・パプアニューギニア・ブルキナファソ・インドネシア・日本
ブラジルの鳴りごま・ブラジルのひねりごま・パプアニューギニアの鳴りごま・インドネシアの鳴りごま
 コマは有史以来、人間とともにあり、何千年の時を生き抜いて今日に伝わっています。古代エジプトやインダス川流域、古代ギリシャの遺跡などから様々な形のコマが出土しているのはご存知でしょうか。そして、今も世界中の国々で、骨、土、木、竹、木の実、種、貝殻など、身近にある素材からコマが作られ続けています。
 アジアやオセアニア、南米のような湿潤な地域でコマの原型をたどれば、どんぐりをはじめとする木の実のコマにいきつくといわれています。落ちた木の実が風に吹かれてクルクル回転する、そんな不思議な動きに霊感を得て、我々の祖先はコマを創造したのかもしれません。その創成期、コマにはどんな役割があったのでしょうか。
 パプアニューギニアやブラジル・アクレ州に伝承される木の実殻のコマは、中身が削りとられ、小さな孔が開けられているため、回転を与えると、ウーンと小さな唸りをたてます。かつて、人々はこの音を自然界のメッセージ、あるいは、精霊の心音と受けとめていたのだといいます。
 1997年、アンドリュー・マクラリー氏よって著わされた『Toys with Nine Lives』(アメリカ合衆国)には、興味深い習俗が報告されています。1900年代初頭、リベリアのゴラー族が作る木の実殻のコマには一つ、孔が開けられていて、初めは地面で回転させますが、その後、サケラフィアの木の繊維を使ったムチを使ってコマを空中に飛ばし、絶え間なくムチ打って、低いうなり音を立て続けるものでした。この音には、畑の作物を荒らすイノシシを追い払う力が宿ると考えられ、木の実殻のコマを回す技能のある男性は、あちこちの村で必要とされていたといいます。
 木の実のコマは、放置すればほとんどの場合、土に還って跡形もなくなるはかないものですが、原始のコマの形とその役割は、伝承遊びの中に保存され続けているともいえます。
 どんぐりの季節、10月14日(日)には日本玩具博物館で「どんぐりゴマ大会」を開きます。クヌギやアベマキのどんぐりに楊枝をさして、伝承のどんぐりゴマをまわしてみるのはいかがでしょうか?