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blog雛人形展の季節になりました。
■昨年の年末以降、神戸開港150年記念展のKIITO(デザイン・クリエイティブセンター神戸)の展示と当館での雛人形展の準備。さらにはこの3月に出版予定の『ちりめん細工の小袋と小箱』(朝日新聞出版)と『日本と世界おもしろ玩具図鑑』(神戸新聞総合出版センター)の2冊の本の編集作業とが重なり、仕事に追われる毎日でした。
■KIITOでは先月25日から当館所蔵品約2000点を展示する「TOY&DOLL_COLLECTION」がスタートし、さらに当館でも去る4日から6号館で「雛まつり~雛と雛道具~」が始まりました。いずれの展示も大変な作業でしたが、他では見ることができない当館ならではの魅力的な展示です。
ひと息ついたとはいえ、20日からはKIIITOの春の企画展の展示替えと当館1号館の「なつかしの人形~昭和時代の人形遊び~」の展示と、大きな仕事が引き続き迫っています。そんな次第で館長室の更新も2ヶ月ぶりになりました。
■KIITOでの展示は、常設展が「世界の船」「日本の郷土玩具と近代玩具」「神戸人形」ですが、季節毎に企画展示があり、現在は新春の企画展として19日(日)まで「世界の伝承玩具」と「ちりめん細工」を展示しています。伝承玩具の展示では世界各地のコマやけん玉、ヤジロベエなどが並び、ちりめん細工は会場のKIITOがかつて生糸の検査場だったことから神戸で初めて「ちりめん細工」を開催しました。ただ来場者の評判は上々なのですが、会場が三ノ宮駅から南へ徒歩で約20分もかかることや人の流れがないことなどから来場者が大変少ないのです。それをどうすればよいかが大きな課題です。
■ただ、この22日から始まる春の企画展示の「世界の国の人形たち」は国際港都神戸にふさわしい展示であり、さらに「雛飾りと端午の節句飾り」も、神戸が経済的に大きく発展した大正時代に飾られた雛人形と端午の飾りが一堂に展示され、神戸では過去になかった展示だけに大きな話題を呼ぶのではないかと思います。雛人形は舞子の旧家と灘の造り酒屋で飾られた立派な御殿飾りですが、当時、家が1軒買えたと聞きました。さらに須磨の旧家で飾られた京都の大木平蔵製の雛人形や宮内省御用達の神戸・上田人形店で売られた勝手道具など、神戸ゆかりの雛飾りたちの里帰り展だけに、大勢がご来場下さるのではないかと期待しています。
■当館6号館での「雛祭り~雛と雛道具~」も、江戸時代から昭和初期までの雛人形32組が一堂に並ぶ素晴らしい展示になりました。西室には江戸時代~明治時代の享保雛と古今雛と立雛など17組が美しい雛屏風の前に並び、東室には明治~昭和初期までの御殿飾り6組と段飾り3組が時代を追って展示されています。手前味噌になりますが、私自身が感動するのはその質の高さです。西室には江戸時代に滋賀の呉服屋で飾られていたと伝わる享保雛、江戸の桃柳軒玉山の古今雛、明治初期に東京から京都へ玉眼(ガラス目)の手法を伝えた玉翁の古今雛、有名な京都の大木平蔵の古今雛など、当時の最高クラスの雛人形がずらりと並びました。それに東室の御殿飾りや段飾り、雛道具の数々も当時の最高級品です。
■私自身も、これほどの内容での雛人形展は国内でも珍しいのではないかと思います。江戸期の雛人形などは大半が購入資料で永年の蓄積の結果ですが、檜皮葺の御殿飾りなどは市場に出ることはなく、大半が寄贈品です。今回も大阪の江戸時代から続く旧家から寄せられた御殿飾りを初公開していますが、来館された皆様から「こんな素晴らしい雛人形展を見るのは初めてです。来てよかった」と喜びの声を再三いただきます。
■5号館のランプの家でも大正から昭和初期の御殿飾りと段飾りを展示しています。ぜひご来館ください。
■最後に嬉しいニュースです。婦人画報の4月号から来年3月号までの1年間、同誌の目次頁に当館所蔵の世界の玩具が「お伽の国の歳時記」として紹介されます。4月号はイースターエッグ。尾崎学芸員が毎号解説いたします。
(館長・井上重義)
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