日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2017.02.28

雛人形の春2017~玩具博物館、そしてミナトマチ神戸のTOY &DOLL COLLECTION~

2月が逃げるようにして去り、いよいよ新暦桃の節句が近づいてきました。皆さまのご家庭ではお雛さまを飾っておられますか。日本玩具博物館の春恒例の特別展「雛まつり」―――今年は“雛と雛道具”がテーマです。昨春、『源氏物語』を題材にした六曲一双屛風を入手いたしましたので、今回、展示ケース3間分にその屛風を立てまわして、江戸時代の雛たちを展示してみました。雛人形のためには雛屛風が用意されるべきところですから、展示台のバランスに苦労しましたが、展示室に雅やかな“面”が生まれ、いつもとは違った風情に仕上がりました。左隻の前には江戸型古今雛三対を、右隻の前には京阪型古今雛三対を展示しておりますので、同時代における両者の様式の違いを比較しながらご覧いただけることと想います。

玩具博物館6号館雛まつり展会場西室奥の展示風景

一方、神戸KIITO(デザイン・クリエイティブセンター神戸)の「TOY & DOLL COLLECTION」会場も2つのコーナーの入れ替えを行い、2月22日(水)から春の展示が始まっています。日本の春は人形の季節ですから、世界の玩具コレクションコーナーには「世界の国の人形たち」を、季節のコーナーには「雛飾りと端午の節句飾り」を展示いたしました。

「雛飾りと端午の節句飾り」(―6月11日まで)では、明治末から大正時代にかけて、神戸市内の家々で飾られていた雛人形や甲冑などを広げています。雛飾りについては、造り酒屋だったご家庭から寄贈を受けた明治30年頃の御殿飾りと大正11年の檜皮葺き御殿飾りをご紹介しています。いずれも御殿は幅180㎝、奥行75㎝の大型で、京都の大木平蔵(丸平)によって調えられた名品です。玩具博物館内の展示ケースは小さな玩具を展示するのにふさわしいサイズとして、奥行90㎝しかありませんので、これらの大型御殿飾りを展示するとなると、ぎりぎり一段しか作れず、本来、御殿の前にずらりと並ぶ雛道具が数点しか出せないのですが(その分、人形たちの表情を間近にご覧いただけます)、「TOY & DOLL COLLECTION」会場では、大型御殿飾りに合わせて奥行180㎝のケースを造作していただきましたので、華やかで量感のある御殿飾りの雰囲気を感じていただけると思います。

TOÝ&DOLL COLLECTION「雛飾りと端午の節句飾り」展示風景


雛飾りについてはもう一組、明治40年代に京都で作られ、神戸市須磨区のご家庭で大切に飾られていた明治40年代製の段飾りをご紹介しています。 

明治40年代の古今雛(神戸市須磨区のご家庭から震災後に寄贈を受けたもの)


日本玩具博物館は、平成7(1995)年の春、阪神淡路大地震で甚大な被害を受けた町々に向けて、家屋の倒壊や転居などによって行き場を失った雛人形や武者人形のお預かりや引き取りの呼びかけをいたしました。そうしたところ、なんと、その1年間に300軒に及ぶお宅から寄贈の申し出がありました。受け取りに伺ったり、お送りいただいたり、中にはトラックで持参下さる方もありました。そのうちの150軒分を収蔵登録させていただき、あとは二次資料として保管したり、当館と交流の深いヨーロッパ各地の玩具博物館や中国やアメリカの民俗博物館、また新しいものは近隣の幼稚園や小学校、福祉施設などへ再寄贈させてもらったりもいたしました。この段飾り雛は、私たちにとってあの地震の年の象徴ともいえる人形です。じっと見つめていると、あのように大変な日々の中でも、人形たちを守ろうとされた方々の、優しい気持ち、暖かい言葉がよみがえってきます。

100年以上前に生まれ、かわいい女の子たちの目を楽しませ、けれども、戦争や水害や大きな地震…と様々なつらい出来事をかいくぐってきたお雛さまたちが久しぶりに神戸の町へと戻ります。懐かしい方々との再会が待っています。

TOY & DOLL COLLECTION「雛飾りと端午の節句飾り」展示風景


2月26日(日)2時から3時には「桃の節句と雛飾り」と題する講座を開催し、雛まつりに歴史にも触れていただきました。今後、3月4日(土)・12日(日)・19日(日)・26日(日)には各日、11時~/14時~の2回、「ギャラリー・トーク」を予定しております。また、折々の佳き時間帯には「貝合わせ体験の会」を開きたいと思っておりますので、(玩具博物館へはもちろん)ミナトマチ神戸のTOY & DOLL COLLECTIONへも時間を合わせてご来場くださいませ。

講座「桃の節句と雛飾り」の様子
ギャラリー・トークの様子

(館長・尾崎織女)

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