コピー商品の出現で世界から伝統玩具が姿を消す現実 | 日本玩具博物館

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館長室から 2011.12.04

コピー商品の出現で世界から伝統玩具が姿を消す現実

12月、師走の季節なのに当館の庭は紅葉の真っ盛りです。山茶花や早咲きの椿の花、美男蔓や南天の赤い実にも心が癒されます。あと数日は紅葉が楽しめるのではないでしょうか。

今月に入るとクリスマスシーズンということもあってか、6号館の世界のクリスマス飾りをご覧くださる方が日ごとに増えています。来館者からは展示品だけでなく、この6号館への紅葉に彩られた小道が楽しいとのお言葉を何人もの方からいただきました。先日も広島からご来館いただいた方から、遠路来た甲斐があったとのお言葉に喜んでいます。昨日の尾崎学芸員のクリスマスの展示解説会も好評で、遠方からも大勢がご来館下さいました。

これま でにも収集にはタイミングが必要だと、何度も申し上げてきましたが、展示替え毎にそれを実感しています。今回の展示でも約7割が現在では入手不可能です。最近顕著なのが生産者が廃業して入手ができなくなったものが多いことです。その原因の多くは中国製の安価なコピー商品の影響によるもので、例えば可愛いらしい小さな木製人形で有名だったイタリアのセビィ社は1999年に160年の歴史を閉じましたし、スウェーデンで1948年に誕生したローソクを灯すと天使が鐘を鳴らしながらクルクル回る金属製のエンジェルチャイムも世界中で人気があって、日本にも70年代から輸入され、当館も何種類かを購入して展示しています。それが近年見かけないと思っていたら安価な中国製のコピー商品の出現で数年前に会社が倒産、製造中止になっていたのです。それに本場ドイツのクリスマスマーケットなどでも、長年売られてきた麦わら製のオーナメント類や木製玩具もコピーの中国製品が増えており、世界各地で伝統的に作られてきた民芸品の数々がコピー製品の影響で急速に姿を消している状況に複雑な気持ちがします。というのも、当館が長年にわたり復興に努力してきたちりめん細工の分野でも中国製品が出回り、ちりめん細工が粗雑な手芸品として認識される状況が生まれているからです。伝統文化を外国製のコピー商品から守るにはどうすればよいのか、今後の大きな課題です。

スウェーデン製のエンジェルチャイム

博物館にとって、個性的なコレクションの構築こそが大切だと考えており、収蔵場所に四苦八苦しながらも必要なものが見つかれば購入しています。1年先のクリスマス展では日本のクリスマス資料を展示することになりましたので関係資料を収集していますが、嬉しいことに先日、日本で50年ほど前に製造されアメリカに輸出された松かさで作られた小人と、同じくアメリカで製造された貴重なガラスのオーナメントの数々を入手しました。アメリカの骨董市で売られていたものだそうで、入手された方からの購入です。他にも収集にご協力いただいています京都のS様からもロシアで制作の貴重なクリスマス飾りの寄贈を受けました。来期の展示をどうぞお楽しみにしてください。

エンジェルチャイムは最近になってトルコのAras Metal社が製造の権利を取得し、デザインやパッケージなど、当時の姿そのままに作られるようになったことを知りました。しかし、なぜスウェーデンで製造ができなかったのでしょうか。

(館長・井上重義)

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