『私の玩具遍歴』を改定再版しました  | 日本玩具博物館

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館長室から 2010.08.13

『私の玩具遍歴』を改定再版しました 

猛暑の日々が続きます。緑に囲まれた当館は蝉の鳴き声が賑やかですが、今年は庭に少し異変を感じます。オハグロトンボが例年よりも多く、反対にアマガエルの姿が少ないように感じるのです。木々は大きく成長して、森の中の玩具館と呼ばれてもおかしくない状況になりました。6号館への小道を歩けば、目の前を優雅に飛ぶオハグロトンボと出合ったり、せみの鳴き声に、昔が蘇る方も多いのではないでしょうか。今日は久しぶりに大勢の来館者で賑わいました。

さてこの度、一昨年の1月に発刊した『私の玩具遍歴』の改訂版を再版しました。この小冊子については<ブログ「館長室から」2008年2月11日>でも触れていますが、私の「地域文化功労者文部科学大臣表彰」の祝賀会出席者にお渡しするために、静岡にある郷土玩具の会の機関紙『雪だるま』に連載中だったものを42ページの冊子に纏めて500部を印刷し、祝賀会出席者や関係者の皆様にお配りしたものです。内容は私の郷土玩具蒐集の動機や玩具にまつわる人との出会い、当館の今後の問題点などを纏めたものでした。
在庫が無くなっていたのですが、希望者があり、私の玩具蒐集の足跡や考えを知っていただくためにも必要だと考えて再版しました。再版にあたり、2年余の歳月を経過していることから、見出しの変更や最終ページの当館の問題点をその後の経過を踏まえて「日本玩具博物館の課題」として書き改めました。

私が郷土玩具の収集を始めたのは今から47年前の1963年です。通勤途中に立ち寄っていた書店で1冊の郷土玩具の本を手にしたからですが、その本と出合わなければまた違った人生を送っていたと思います。私自身はそれまで、江戸や明治時代からの古い歴史を持つふるさとの玩具がこんなにも全国各地で連綿と作られていることを露知らずにいました。当時は高度経済成長の真っ只中、古いものは価値のないものとして忘れられ、捨てられる時代でした。忘れられ失われる弱者(子ども)の文化財に気がつき、それを蒐集して後世に伝えるのが私に課せられた使命だと感じて、蒐集が始まったのです。『私の玩具遍歴』には、山陰地方の土人形のこと、世界の玩具の蒐集動機、ちりめん細工のことなど、これまでの私の蒐集遍歴ともいえる内容です。他人の真似をするのでなく私自身が大切だと考えたものを追い求めてきた47年間の記録集ともいえるものです。ご希望の方にはお送りしますので、印刷費と送料代の400円(切手可)を添えてお申し込みください。

<ブログ「学芸室から」2010年8月12日>に、今春以来、故人となられた方の郷土玩具コレクションをいくつも受け入れて整理中とありますが、岡山、大阪、千葉にお住まいだった方のコレクションです。いずれの方も昭和40年代の知り合いでした。私よりも年配でもう20年も前に亡くなられた方もあり、その不思議なご縁に驚くと共に後世にきちんと伝えなければならないと大きな責務を感じています。他にも1件、大正から昭和初期に作られた貴重なコレクション(約150点)をある施設から受け入れました。中には郷土玩具としては国宝クラスといっても過言でないほどの貴重な資料の数々が含まれており、早速にこの秋の企画展「玩具に見る日本の祭り」に展示します。
当館の玩具に対する姿勢や活動が評価された結果、集まってくると思うのですが、正直なところ収蔵庫も満杯状態です。文化遺産は社会の財産でもあり、本来は社会が守るべきものではないでしょうか。個人の力には限界があります。当館が蒐集した膨大な資料は、文化財としての登録や指定を受けたものは1点もありませんが、いつの日か高い評価がされるときが来ると私は信じています。その日のためにも、どうすればよいのか、模索が続きます。

時事通信社配信の私のコラム「ふるさとの玩具」は静岡まできました。長野、福井、石川、富山、新潟と続きます。大勢の皆さまから、楽しく読んでいるとのお言葉をいただき喜んでいます。あと4ヶ月、頑張ります。

(館長・井上重義)

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