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blogトルコの玩具博物館から
■このところ海外から玩具博物館関係者の来館が続きます。当館がHPの英語版を持ち、情報発信をしているからでしょうか。
■去る7月下旬にはエストニア第2の都市にあるタルトゥ玩具博物館の関係者3名が来館され、次いで今月3日(土)にはトルコ共和国からイスタンブール玩具博物館の館長Sukru Sunay Akin(スナイ・アクン)氏が来館されました。海外でも玩具についての関心が高まっているのか、近年、各地に玩具博物館が設立されています。タルトゥ玩具博物館は1994年、イスタンブール玩具博物館は2005年の設立です。
■私は1985年にスウェーデンのストックホルム玩具博物館を見学以来、デンマーク、ベルギー、スイス、ドイツ、オーストリア、スペインなど、ヨーロッパ各地の玩具博物館をいくつも見学し、見聞を広めてきました。
■世界で最も古い歴史を持つ玩具博物館は、ドイツの旧民主共和国領内にあるゾンネべルグ玩具博物館です。1901年の開館で国立でした。その後長い空白があり、ヨーロッパ各地で玩具博物館が造られるようになるのは1970年代からです。有名なニュールンベルグ玩具博物館は1971年。ザルツブルグ玩具博物館は1978年。ストックホルム玩具博物館は1980年の開館です。
■1960年代になってヨーロッパでも古い道具への郷愁がおこり、昔のおもちゃへの関心が高まり収集家が登場します。その収集品の散逸を防ぎ守る為に1970年代から各地に玩具博物館が誕生したのです。このように見ると今年開館満35年を迎えた当館は、世界の玩具博物館の中でも最古参の部類です。そして、私が35歳と若くして玩具博物館を設立し、海外の玩具博物館の事情を踏まえて個性的なコレクションの構築を計ったため、世界でもユニークな存在の玩具博物館として認められるまでになったのです。世界150ヵ国から3万点を超える資料を収集した玩具博物館は、世界でも類がないと思います。
■ヨーロッパでは個人が集めたものでも、それが社会にとって有益で大切なものであれば、行政府や自治体、市民が立ち上がり、玩具博物館が設立された歴史があります。ニュールンベルグ玩具博物館もバイヤー博士が収集した資料を後世に伝える為に市が設立し、ストックホルム玩具博物館はオールドタウン内にある小学校を街の活性化のために収集家に提供。スペインのトレドにある玩具博物館もEUが街の活性化を計るため、個人収集家を支援して立派な玩具博物館が設立されました。
■先日、当館館報『おもちゃと遊び』№26を発刊しましたが、金融機関にお勤めで海外生活も長く、玩具事情にも精通された東京在住の山口照二氏が『イギリスの玩具博物館と日本玩具博物館』と題してご寄稿下さいました。氏は「当館を個人立とはいえ、その思想と哲学は趣味の域をはるかに超えている。館長の献身的なご努力の結果、世界に名だたる内容の充実した玩具博物館になり、建物にもディスプレイにも温かさに溢れている。他国の玩具博物館をいろいろと巡ったが、ここのように何度でも来たくなり、来るたびに新鮮な驚きと癒しを与えてくれるところは多くない。」と高い評価をして下さいました。
■8万点もの膨大な資料を持ち、季節毎にいろんな角度から玩具に光を当てた展示をしている玩具博物館は、正直なところ世界でも数少ないと思うのです。35年間で貴重な数々の資料を収集し、優秀な博物館スタッフに支えられて、海外からも注目される玩具博物館に成長したのです。
イスタンブール玩具博物館館長と
硬い握手を交わしました。
寄贈した雛人形
■この度、イスタンブール玩具博物館館長のスナイ・アクン氏が来館されたのは、外務省広報文化交流部総合計画課の招聘によるものでした。同氏の本業は舞台俳優で詩人、著述家です。2010年が「トルコにおける日本年」であることから、事前広報をかねて同氏をレポーターにして日本の各地をテレビ取材され、その一環として当館にも立ち寄られたのです。当館の紹介や私とアクン氏との対談も収録されました。11月にトルコで放映されるそうです。また同氏からぜひ雛人形を同館で展示したいとの要望が寄せられ、当館から1950年代の雛人形一式を寄贈しました。トルコからも伝統的な玩具や人形が届く予定です。
(館長・井上重義)
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