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blogたばこと塩の博物館企画展 「ちりめん細工の世界」展によせて
●2月10日から東京・渋谷のたばこと塩の博物館で、当館所蔵の資料を中心とした企画展「ちりめん細工の世界」が開催されます。その準備のため、私と学芸担当者(尾崎、井上)が7日に上京いたします。10日のオープンめざして、たばこと塩の博物館学芸員の皆様と共同で展示作業にあたりますが、学ばせていただくことも多いものと楽しみにしています。
●実はたばこと塩の博物館での「ちりめん細工展」は、私の長年来の夢でした。1994年にNHK出版から私の監修で『伝承の布遊び ちりめん細工』を出版しましたが、所用でNHK出版に行くとき、同じ渋谷にあるたばこと塩の博物館には必ず立ち寄っていました。そして将来、このような立派な博物館で「ちりめん細工展」を開催し、大勢の皆様に日本女性が生み出した伝統手芸の美や心を知ってもらいたいと思いました。その10年来の夢が叶い、嬉しいです。
●私たちの祖先は暮らしの中からさまざまなものを生み出しました。その人々が作り出した文化遺産を守り伝えるのが博物館の大切な仕事だと思います。博物館は様々なものをコレクションしていますが、大切さに気付かれないままに消えてしまったものも少なくありません。江戸時代から着物などに使われてきた縮緬の端切れで作られた、花や動物、玩具、人形の小袋や小箱の裁縫お細工物(ちりめん細工)もそのひとつでした。私は全国の姉様人形や手まりなど女性にちなんだ郷土玩具を収集する中でち押絵小箱ちりめん細工の存在を知り、約30年前からちりめん細工を収集し保存してきました。収集は古裂専門店やオークションでの購入、私の監修したちりめん細工の本に掲載された作品の制作者からの寄贈などのほか、大勢の皆様からも古作品の寄贈を受け、約3000点に上るちりめん細工コレクションを形成しました。国内には数千の博物館がありますが、ちりめん細工をこれほど所蔵する博物館は他にないでしょう。このようなコレクションを築くことができたのは「消えゆく子供や女性の文化財を後世に伝え、光を当てること」を当館の使命と考え、人が集めるから集めるのでなく、ちりめん細工に文化的価値を見出し、長年にわたり収集活動を継続、コレクションの形成を図り、体系化してきたからです。
●数が集まればいろいろなことが見え、価値も生まれます。ちりめん細工には花鳥風月が表現されていたり、魔よけや招福の意味を持つものが多く、実用性だけではなく遊び心もふんだんに織り込まれているなど、小さな作品のひとつひとつが、私たちにさまざまなことを語りかけ教えてくれます。日本の女性たちが受け継いできた、小さな布裂も大切にする心、手の技、美的感覚のすばらしさを再発見していただく場になればと思います。
●たばこと塩の博物館は渋谷駅から東へ徒歩で約10分と交通も便利です。ぜひ、企画展「ちりめん細工の世界」にお出かけください。
(館長・井上重義)
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