「端午の張子虎」 | 日本玩具博物館

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今月のおもちゃ

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2008年5月

「端午の張子虎」

  • 明治末期
  • 京都府京都市/紙(張子)

 中国において端午の節句といえば、春節(旧暦の正月)に次ぐ大きなお祭りです。その昔はどこの家でも宝剣をかたどったショウブやヨモギを戸口に飾り、薬草で室内をいぶして疫病神の退散を願いました。またこの日には、粽を食べる習慣などもあって、日本の端午の節句の行事が中国から伝えられたことをよく示しています。
 

 かつて端午がめぐってくると、中国の子どもたちは、虎の顔があしらわれた帽子に沓(くつ)、虎模様の上着を身にまとい、額には虎を表わす「王」の字を書いてもらいました。首からは厄除けになる虎の香包をぶら下げ、夜には虎形の枕で眠ります。まさに虎づくし!

 中国では「端午の虎、五毒をふみつける」という言葉がよく知られています。五毒とは、ムカデ、サソリ、蜘蛛、ガマ、蛇のことで、強い精力をもった恐るべき生き物を意味します。それらを平然と踏みしめる虎は、魔を追い払う霊獣というわけでしょう。

 日本の節句飾りに、古くから張り子の虎が添えられるのは、このような中国の習俗に影響を受けたものでした。子どもたちが虎のもつ霊力にあやかり、強く健やかに育ってほしいという人々の願いが込められたのです。

 写真は、現在開催中の特別展「端午の節句飾り」に展示中の張り子虎です。明治末期の大阪製でしょうか。身を低くして腰をあげ、四方八方を睥睨する百獣の王の眼には、硝子が使用され、生き生きとした生命感にあふれています。