「琉球張り子・イヌグヮー」 | 日本玩具博物館

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今月のおもちゃ

Toys of this month
2006年1月

「琉球張り子・イヌグヮー」

  • 大正末~昭和初期
  • 沖縄県那覇市/紙(張子)

  1号館の企画展「犬のおもちゃ」では、日本各地の犬の郷土玩具を数多く展示していますが、その中で琉球張り子の犬「イヌグヮー」は、独特の雰囲気で来館者の注目を集めています。ツンと斜め上方を見つめる犬の姿にはどことなく気品が漂い、黄色地に黒、赤、白、緑で描かれた繊細な文様には、琉球らしい美意識が感じられます。

 戦前の沖縄では、旧暦5月4日が子どもの節句で、その前後数日間には盛大な玩具の市が立ったそうです。市には、ハーリー船競技に登場する船を真似た玩具、起き上がり小法師や人形、動物の張り子玩具などをぎっしり並べた露店がひしめき、子ども達にとっては夢のような世界だったそうです。その玩具のほとんどは魔除け、厄除けなどの意味を持ち、子どもの健やかな成長を願うものでした。

 このイヌグヮーも、節句の市で売られたものと思われますが、戦前の琉球張り子は、戦場となった沖縄にはほとんど残されておらず、とても貴重な資料です。大正末期の玩具収集家、故・尾崎清次氏から寄贈を受けたコレクションの中に含まれていたもので、同氏の著書『琉球玩具図譜』(昭和11年/笠原小児保健研究所発行)の中にも紹介されている作品です。