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blog<見学レポート>柳井の金魚ちょうちん
◆北九州市立小倉城庭園博物館の「ミニチュア玩具の世界」は、8月15日、会期を延長してほしいといわれるほどの好評をいただいて無事終了し、笹竹学芸員とともに撤収作業にお伺いしておりました。
◆その出張の帰り、白壁の町並に“金魚ちょうちん”が揺れる夏の風景を求めて、山口県柳井の町を訪ねました。お盆の祖霊迎えの提灯、眠り流しの灯籠……夏のまつりに欠かせない灯火の造形にして、あまりに愛らしい柳井の町の金魚たち――。地元では、幕末のころ、柳井津金屋の熊谷林三郎氏“さかい屋”が、青森の「ねぶた」にヒント”に伝統織物である柳井縞の染料を用いて作ったのがはじまりとされています。さらに戦後、長和定二氏の指導のもと、大島郡の上領芳宏氏が独自の技法で今日につながる金魚ちょうちんを作り上げたと伺いました。祭礼時には、神迎えの提灯に混じって、柳井のクラシックな街並に華やかな彩りを添えてきたそうです。
◆祖霊を迎え送るお盆の季節、町の方々がどのように金魚ちょうちんの祭りを盛り上げておられるのかを拝見したくて、笹竹と二人、日盛りの柳井の町を汗だくで歩き回りました。
◆町の方々にお伺いしたところによると、金魚ちょうちんを題材にした夏まつりが企画され、国の支援を受けてその準備がはじめられたのは1991年のこと。翌年、第1回目の「金魚ちょうちんフェスタ」の開催をめざして、延べ1000人を超える市民の手によって作られた3000個の金魚ちょうちんが町に飾られました。台風襲来の季節、イベント中止を余儀なくされながらも、第5回目からは8月13日の“金魚ちょうちんまつり”は柳井の夏の風物詩として定着していきました。暑さのさなか、催事をつくりあげる町の方々のご努力には本当に頭が下がります。
◆残念ながら8月13日当日の催事は終了していましたが快晴の青空のもと、白壁の町に映える紅白の金魚ちょうちんの美しさを目に収めて、喜びに満たされる半日旅でした。
◆国木田独歩の旧宅も見学でき、柳井を舞台に著された『少年の悲哀(かなしみ)』や『置土産』という作品の風景にも出あえます。町の方々は皆、穏やかで親切。古き良きお盆の風情を楽しむ旅の目的地に、柳井の町はとてもふさわしいところです。
◆金魚ちょうちんはお土産に買い求めることもでき、また、自分たちの手で作り上げる材料セットも準備されています。
(学芸員・尾崎織女)
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