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blogリカちゃん&ジェニーの世界展オープン!
*「<リカちゃん>という名前を聞くだけで、私もこの子たちもわくわくするんです。・・・」――――今日も、そんなふうに言いながらご来館下さるお母さんと小さな女の子がありました。4才のお嬢さんの手には毎日、一緒に遊んでいるというピンクの髪のリカちゃんが握り締められています。「この子にたくさんのお友だちを見せてあげたい。」と、自分のリカちゃんを展示ケースの中のリカちゃんに向き合わせるように展示をめぐる少女の様子に、私はとてもうれしくなりました。
*2月28日のオープン以来、たくさんの家族連れの来館があり、1号館企画展示室はいつも以上に賑やか。滞在時間もとても長いのです。お母さんと娘、それにおばあさまを加え、三代で楽しんでいかれる様子も見受けられます。お母さんには、友人たちと着せ替え遊びをした子ども時代の思い出、小さな女の子には、今の興味にぴったり当てはまる世界、おばあさまには、自分の娘たちに着せ替え服を作ってあげた記憶・・・・・・。
*昭和42(1967)年生まれで、40年以上にわたって現役を続けている「リカちゃん」は、今を生きる女性たちにとって、幸せな少女時代を象徴する共通言語のようです。楽しそうな来館者の様子を通して、そのことを実感しています。株式会社タカラ(現在のタカラトミー)が企画製造したキャラクタードールですが、少女たちの夢と期待に確実に応えながら、デザインのマイナーチェンジを繰り返し、バリエーションを増やし、着せ替え遊びやごっこ遊びの方法をも繊細に充実させてきた「リカちゃん」の世界は、すでに一企業が創出したマスプロダクトな商品をこえるものなのかもしれません。
*<ブログ「学芸室から」2008年5月3日>でご報告いたしましたが、かねてよりお付き合いのある日本ヴォーグ社から、雑誌のモデルに使われたリカちゃんやジェニー、それに関連する資料の寄贈を受けたのは昨年春のことでした。ある程度の整理は進めていたのですが、それらを展示するとなると、また何もかもが違ってきます。開催前から、数多くの企画展情報が流れ、神戸新聞夕刊一面トップに掲載されたり、NHKが報道してくれたり、各紙地方版にもぞくぞくと記事があがっていたので、期待の声があちこちから寄せられ、マニアの方々も含めて、早く観たい!との問い合わせも非常に多く、プレッシャーを受けながらの準備作業でした。
*人形たちは、服飾作家が着付けた衣装を見せるための雑誌モデルとして使われたものがほとんどで、もともとの衣装を外され、髪型などもデザインが変えられて、多くは裸の状態で入ってきました。けれど、人形たちにはすべて、何年の、何というタイプの、何というシリーズであるという、製造時の決まりがあります。その決まりごとと、出版社がプロデュースした作家衣装・帽子・靴・アクセサリーなどとの間で、同じ一体の人形が右往左往。 私たちは、500体の人形と1000種類に及ぶ衣装や小物を、膨大な資料に照らしながら結び合わせる作業に右往左往。 ものすごく手間取ったのでした。
*手作り衣装のジェニー(ノーマルタイプ) *フェアリーフィールドジェニー *デザイナーによるウェディングドレスのジェニー&フレンドドールたち *ジェニーのフレンドドール・ティモテ
*人形に詳しいスタッフとふたり、その作業は深夜まで続き、1~2週間ほど、2~3時間睡眠の日々を続けたせいで、展示する頃には、何もかもが人形の衣装にみえ、何もかもがジェニーやリカちゃんに見えてきました。テレビで黒柳徹子さんの髪型を見ても、朝、ご近所の奥さんのダウンジャケットを見ても、ジェニーが想われました。ついには、夢に人形たちが登場するようになり、明け方、人形が耳元でささやきます。「私、マリーンよ。赤いベルベットのヘッドドレスね、ジェニー・エクセリーナが着けてるの。私に返して頂戴!」なんて…。
*昭和62(1982)年に誕生したタカラ・バービーを前身とするファッションドール・ジェニーは、リカちゃん以上といえるバリエーションを誇っています。ノーマル(スタンダード)タイプにはじまって、 エクセリーナ、18歳ジェニー(プリンセスジェニー・ミスジェ二ー・グレイシージェニー)、15歳ジェニー、1991年フェイスジェニー、エンジェルズガーデンジェニー、フォトジェニック、Newジェ二ー……。ファッションブランドとのタイアップをふくめ、「そこまでやるのか!?」「そこまで出来るのか?!」と驚いてしまうほどの情熱によって、繊細かつ大胆に互いに差異をもった個体が増殖されていきます。「バリエーションの充溢」 は、郷土玩具や伝統人形にも見られる日本的モノづくり文化のキーワードだと思いますが、リカちゃんやジェニーにおいても、それと同じ特性が示されているのかもしれません。
*展示への準備作業を通して、私たちに様々なことを気付かせてくれた「リカちゃん」と「ジェニー」ですが、また、これから来館される多くの方々との出会いによって、さらに広がりのある展覧会にしていきたいと思っています。
(学芸員・尾崎織女)
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