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blogスウェーデンからのお客さま
*先週末は、2日間にわたりスウェーデンからのお客さまをお迎えしていました。エレナ・クェヴェード・スターレさん(Helena Quevedo Stahre)は、現在、ストックホルムにある異文化理解と人種融和に取り組む施設(Det Stora Knytkalaset)で民芸玩具を使ったワークショップ事業を幅広く展開しておられます。彼女は、日本人を祖父にもつニューヨーク生まれのメキシコ人で、本国メキシコではグラフィックデザイナーとして活躍しておられたそうです。
*エレナさんは、メキシコをはじめ、世界各地の玩具に興味をもち、手元には700点を超える玩具資料を所蔵しておられます。それらにインスピレーションを得て彼女が企画するワークショップには、スウェーデン内外に暮らすいろんな民族が集い、大人も子どもも一緒になって、ひとつのテーマに取り組みます。「玩具は文化の垣根をこえ、人の心の垣根を瞬く間に取り払ってくれます」と、エレナさんは、自らの仕事について信頼にあふれた笑顔で話されました。
*現在、エレナさんは、父祖の地・日本の伝統文化と風景を求め、大好きな民芸玩具の姿を探しながら、約一ヶ月にわたり日本各地を旅行中です。ウェブサイトで知った日本玩具博物館への来館目的の一番目は、当館が行っている玩具のワークショップの内容を知りたいということでした。
*一日目は、館内の展示をくまなくご案内した後、淡島寒月の『おもちゃ百種』や清水晴風の『うなゐの友』、山内神斧の『壽壽』などの玩具絵もたくさんお目にかけました。エレナさんは、疱瘡除けの赤い玩具や動物を題材した張子玩具の意味、呪術性のある郷土玩具の姿について関心を示され、同時に玩具のデザインや細部に描かれた文様などについても一つ残らず、目にやきつけたいと懸命にご覧になられる様子でした。終始、(私にとっては)慣れない英語での会話でしたが、玩具という小さな形の中に、それらを作る民族固有の文化を発見し、同時に、時や国境をこえる普遍的な感性によって、それぞれのエッセンスをくみあげていかれるエレナさんの視座に、親愛と尊敬の念を抱きました。
*やがて話は、エレナさんの本国・メキシコの民芸玩具に向かいました。彼女の仕事にはメキシコの玩具たちが数多く登場するのですが、日本玩具博物館もまた2000点を超えるメキシコ民芸玩具を所蔵しています。埴輪にも似たチャパスの動物造形のおもしろさ、ナヤリト州に住むウイチョル族の毛糸画の感性が素晴らしいこと、オアハカ州の民芸作家の幻想的な土人形について、セマナ・サンタの祝日にくりだしてくる火薬入りのフーダス人形のこと、精霊の日の骸骨(カラベラ)の意味・・・・・・、文献資料を紐解きながら、話は盛り上がり、あっという間に日没となりました。 二日目は、安永2年刊の玩具絵本『江都二色』の頁をめくりつつ、近世日本の玩具を紹介した後、それらの玩具をテーマにして、当館が開催している伝承玩具づくりにもご一緒していただきました。「かくれ屏風」や「木挽き人形」「体操人形」「風車」など世界各地に普遍的に見られる玩具の他、「ご来迎」や「鯉の滝のぼり」「弾き猿」など日本らしい感性で作られたものも見ていただくと、これ以上ないほど目を輝かせ、おお!素晴らしい!と一つ一つを記憶の中にスケッチしておられるご様子でした。
*別れ際、エレナさんに日本玩具博物館についてお聞きしてみました。
・・・・・・2日間過ごされて、どんな印象をもたれましたか?
・・・・・・この博物館には、人間が自然物を用い、手を動かして作り出したものがあふれています。そう、ここには、伝統(tradition)と文化(culture)と美(beauty)が存在し、空間の隅々に愛(love)が溢れていると感じます。訪れた人の心の中に思い出を育み、一人の人間が成長していくその歴史に、大切な位置を占めることが出来る博物館だと私は思います。・・・・・・・・・
そんな風に言って右手を差し出されたエレナさんの笑顔は、身の内にたくさんの民族を合わせもつ包容力に満ちて、本当に魅力的でした。玩具がとりもつステキな出会いと友情に感謝の気持ちでいっぱいになりました。
(学芸員・尾崎織女)
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