日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2018.04.27

ちりめん細工の今昔展、再び

東京が記録的な積雪に見舞われた大寒のさなかにオープンしたたばこと塩の博物館での「ちりめん細工の今昔」展は、多くの方々に愛していただき、去る4月8日、無事に会期を終えました。来館者数は66日間に2万2千人を超え、嬉しいことに2回、3回と繰り返し来場される方の感動の声が、電話やメールを通して私どもにも届けられました。ご来場下さいました皆様からのお便りからは、今昔の女性たちの自然に接する繊細な感性や、婚礼や出産、子育てなどの場面に登場するお細工物に込められた祈りの心を受けとめていただけたことがよく感じられ、本当に嬉しく思っております。

終了後は、たばこと塩の博物館の学芸スタッフの方々とともに数日間かけて梱包、撤収作業に精を出し、117ヶ口の梱包物の搬出を行いました。4月上旬の東京は、桜に若葉が萌え、紅白の躑躅が街路に咲き乱れ、アメリカハナミズキがビルの空を押し上げる明るい初夏――思いをかけて懸命につくり、そこに人々が集って何かが生まれ、やがて時満ちて形を解かれていく様は、どこか劇場的だと、真っ白の空間に戻っていく広い展示室を眺めてしみじみいたしました。


日本玩具博物館の特別展「ちりめん細工の今昔」オープン!

東京から無事に戻ってきた1000点をこえる展示品をまた開梱し、4月17日から一週間ほど深夜仕事を続けて、当館の6号館と3号館に、再び「ちりめん細工の今昔」展を準備いたしました。たばこと塩の博物館において、総延長75メートルの展示ケースに目いっぱい収まっていた展示品の約9割が、総延長43メートルの我が館に展示できてしまう不思議……。

展示グループを組み替え、平成のちりめん細工を展示するゾーンには、今春、日本ヴォーグ社より刊行された『季節のつるし飾りとちりめん細工』の掲載作品を新たに合わせましたので、また違った雰囲気で作品を味わっていただけるのではないかと思います。

展示風景・・・バラ色の解説パネルは原田学芸員がデザインしてくれました。展示空間が華やかに見えます。

展示準備を行っている最中、日本玩具博物館のちりめん細工展のためにと、幸便に託して素晴らしい贈り物が届きました。それは――たばこと塩の博物館の湯浅淑子主任学芸員がちりめん細工展に合わせて個人的に収集しておられた浮世絵で、幕末から明治時代の女性たちとお細工物との関わりがよく示された資料です。十年越しの企画展がよいものになるよう長い期間心にとめて準備して下さった、湯浅学芸員のお気持ちを非常に嬉しく思っておりましたのに、さらに大事な資料を私どもにお預け下さるご厚意と信頼、友情に感激しています。心より御礼申し上げます。

いただいた3枚の浮世絵は、歌川国芳の「大願成就有ケ瀧縞(鳴神)」(天保14~弘化4/1843~47年頃)、豊原国周の「当世見立 十六むさし 楊枝差し」(明治4/1871年)、三代歌川国貞の「俤げんじ五十四帖 四十二 匂宮」(慶応元/1865年)です。この度の当館の企画展には、【江戸文化の薫りを伝えるちりめん細工】のコーナーに2枚をご紹介いたしました。誰袖がデザインされた楊枝差しや花独楽などと合わせてご覧いただくと、150年ほど前の時代を生きた女性たちの息吹を身近に感じていただけるものと想います。退色の恐れがある資料ですので、展示期間は5月31日までと、会期終了前の9月11日から10月8日までとさせていただきます。

市川の堤に雉が鳴き、牡丹の花が豪華に開花する美しい季節――初夏の風情に合わせて、ちりめん細工の世界の花鳥風月をお楽しみいただけたら幸いです。

(学芸員・尾崎織女)

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