日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2015.06.09

イスラエルの「ドレイドル(Dreidel)」 

イスラエルのこま「ドレイドル(Dreidel)」

昨年の秋、イスラエルから玩具博物館へご来館されたお客様とちょっとしたふれあいがあったのですが、その方々から今日、特別な贈り物が届きました。お手紙は井上館長宛てで、ご来館時の我々のもてなしに対するお礼と博物館の展示や佇まいに非常に感銘を受けたことが綴られ、イスラエル伝統の玩具をぜひコレクションに加えてほしいとありました。同封されていたのは、「ドレイドル(Dreidel)」という名のコマでした。

ユダヤ文化についての書物では見たことがあったのですが、初めて手にするドレイドル。贈り主からの解説によると・・・それは、「ハヌカー(Hanukah)」というユダヤ教の祭日、子ども達に与えられる木製のコマ。ハヌカーは、“宮清めの祭”とも“光の祭”とも呼ばれます。カットされた四面にはヘブライ語でנ(ヌン)、ג(ギーメル)、ה(ヘー)、ש(シン)の文字が描かれており、それぞれに、イデッシュの言葉の頭文字で“何もない”“全部”“半分”“置く”を表します。

遊ぶためには、まず、チップ(コイン型のチョコレートなど)と、チップをいれるポットを用意しなければなりません。そして、遊ぶ子ども達は、コマを回して、ギーメルが出たらポットの中の全部のチップを獲得でき、へーが出たら半分をもらえます。ヌンだと何もせず、シンが出ると、自分のチップをポットに置かなくてはなりません。さらに、この四面の文字はヘブライ語の「そこで偉大な奇跡が起こった」の頭文字を表すものとされ、意味深長、イデッシュの文化に裏打ちされた玩具といえます。

ユダヤの祭事「ハヌカー」の贈りもの

あまりに美しいラッピングだったので、どうしたかことか?!と思ったのですが、ハヌカーの祭は、キリスト教のクリスマスの頃にあたり、伝統のハヌカー・プレゼントであることが表されていたのだとわかりました。

もうひとつのドレイドルは、Yair Emanuelさんというアーティストのデザインになるもので、エルサレムの街や風物が描き込まれ、とても愛らしい作品です。コマのレストにもなる円筒は、チップ入れとして使用されるのでしょうか。

Yair Emanuel氏デザインのドレイドル

ユダヤの人々の文化を担った玩具を私達のためにお送り下さったTatyana Prigozhina-Vaskevichさん、Alexander Vaskevichさんにこの場を借りてお礼申しあげます。イスラエルのドレイドルは、4号館2階の常設コーナーに展示しております。ご来館の皆さまにはぜひ、足をとめてご覧下さい。

(学芸員・尾崎織女)

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