日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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館長室から 2015.06.10

感動される博物館に

梅雨の季節が到来しました。緑に包まれた当館の庭や周辺には優雅なガクアジサイなどの花が咲き、小雨にぬれています。そんな当館には、毎日のように関東各地・仙台・佐渡からと、全国各地から来館下さいます。 昨日も横浜から11名もの方が来館下さいました。6号館で開催中の「ちりめん細工の今昔展」をご覧になるために、遠路お越し下さるのです。嬉しいのは来館者から、「本当に来てよかった。これほどの内容の充実したコレクションが展示されているとは思わなかった」と、喜びの言葉をいただくことが再三あります。数日前も東京から来られたご夫妻が館長に会いたいと申し出られ、お会いすると「こんな素晴らしい博物館をつくられたのはどんな方かと思い、お会いしたかった。これからもがんばって下さい」と励ましの言葉を賜りました。

館の庭のアジサイ

展示棟は特別展会場の6号館のほかに、1号館が企画展会場で「世界の動物造形展」。2号館は常設展会場で駄菓子屋の玩具や近代玩具などの懐かしい玩具。3号館は羽子板・手まり・びん細工・市松人形・ちりめん細工など。2階建ての4号館は1階が日本各地の郷土玩具、2階が世界各国の玩具と人形です。5号館は休憩所ですが、春は雛人形が飾られます。縁側に座るとせせらぎの音が聞こえて、心が癒される空間です。
展示会場の展示ケースは合計すれば180m。懐かしいおもちゃ、初めて出合うおもちゃなど、予想外の膨大な量と、質の高い展示品の数々に感動されるのです。

6号館の前の休憩所に感想ノートを置き、来館者の声をお聞きしています。最近、特に感じるのは来館者の感動の声です。「ずっと訪ねたかった玩具館にやっと来ることができました。こんなにも沢山のおもちゃに感激です。子供の時に遊んだおもちゃに懐かしさがこみあげ、走馬灯のように子供の頃の思い出が蘇りました」、「中部地方から来ました。以前からぜひ見学したいと思っていましたが念願がかないました。とても素晴らしかったです。建物の雰囲気もよかったです」、「九州から転勤で姫路に来ました。周辺を探訪している中で玩具博物館を見つけました。軽い気持ちで入ったのに見所が多くて楽しめました。国内外の様々な玩具の違いや共通点を比べているうちに時が経ちます。郷里の玩具の良さも再発見できました」、「すごくおもちゃがあってとてもたのしかった。またこんどいとこをつれてきます。たのしかったです」。感想ノートの来館者の声に、励まされると共に、このような博物館を造ることができたことの喜びをかみしめています。

開館以来、私は博物館のあるべき姿を模索してきました。そして座右の書にしてきた一冊が『二十一世紀博物館-博物資源立国へ地平を拓く』(東京大学出版会・2000年、西野嘉章)でした。「いま、博物館に求められているのは、重要な博物資源を適格に予測し、その見通しに適うかたちで、いち早くそれらを獲得することである。そのための基本戦略を打ち立て、収集・備蓄事業を可及的速やかに実践へ移さねばならない」。「一般の博物館は、すでに有価であると認められたモノの蓄積装置であり、それ以外のものを容れる機能を本来的に持ち合わせていない。・・・いまだ有価なものと認識されていないが、やがてその有用性が見いだされることになろうモノを探索し、それらを獲得し、システマティックに蓄積する作業に取り掛からねばならないのである」。私は、そのような活動が大切だと考えて、開館後、収集活動を展開してきました。国内には5千館もの博物館施設がありますが、ちりめん細工、御殿飾り雛、神戸人形、ままごと道具、玩具の面、それに世界160カ国3万点の玩具や人形などをコレクションし、所蔵する館はないと思います。それが来館者の感動につながっていると思います。

ここ数年、当館のコレクションは東京の出版社からの依頼で、本になり出版されることが相次ぎます。これまでも文渓堂から『おもちゃの面』と『ままごと』が出版されましたが、この度、PHP文庫から『昔の玩具大辞典』が出版されることになり、私に監修依頼がありました。80余点の玩具が紹介されますが、9割近くが当館の所蔵資料です。ただ江戸や明治時代のものでなく、その中心は昭和時代の玩具です。紙メンコやコマ、おはじき、お手玉だけでなく、野球盤や人生ゲーム、ゲーム&ウオッチ、仮面ライダー変身ベルトなどが紹介されますが、それらも当館の所蔵品です。こんな物まで集めていたのかと驚かれる方も多いと思います。

1号館では企画展「世界の動物造形」の展示が完了、スタートしました。この企画展も恐らく国内では当館でないと見ることができないユニークな展示です。収集方針と時期に恵まれ、コレクションの構築に成功したのです。展示担当は尾崎学芸員。展示手法も素晴らしく、皆様に喜ばれています。心からご来館をお待ち申し上げています。

(館長・井上重義)

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