七夕の贈りもの | 日本玩具博物館

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学芸室から 2015.07.10

七夕の贈りもの

兵庫県立歴史博物館に播磨の七夕飾りを展示する

梅雨の晴れ間の青空に早、アブラゼミの鳴き声が聞こえ始めました。小暑を過ぎ、いよいよ暑い夏が近づいておりますが、皆さまにはいかがお過ごしでしょうか。
太陽暦の七月七日は過ぎてしまいましたが、今夏、兵庫県立歴史博物館からご依頼をいただき、同館1階の“歴史工房”の展示コーナーに姫路と生野の七夕飾りをたてました。これは、県立歴史博物館が周辺施設と連携して、博物館的な協働を行っていく第一歩となる試みです。
県立歴史博物館のこの夏の特別企画展は、『姫路今むかし』。“歴史工房”には、かつてのふるさとの夏を想起していただけるような一角を…と考え、日本玩具博物館からは、他地域にはあまり知られていない“紙衣”が登場する「ふるさいとの七夕」をご紹介することに致しました。展示の風景を画像でご紹介いたします。

★「姫路市飾磨で飾られていた七夕さんの船」
ひと月遅れの八月七夕、姫路市の古くからの港町・飾磨を中心とする地域では、昭和40年代頃まで「七夕船」が飾られました。全長1㍍に及ぶ屋形船で、船大工の手で作られる本格的なものもあり、屋形の中にろうそくを点したり、豆電球をチカチカ光ら せたりして、笹飾りともに七夕の夜を情緒豊かに彩りました。


★ 姫路市から高砂市にかけての播磨灘沿岸地方に伝わる七夕飾り
七夕にヒトガタ形式の紙の着物が飾られた記録は江戸時代後期の文献にあり、全国で行われていたと推測されますが、今も継承される地域は限られています。当館館長の井上重義が播磨灘沿岸地域に遺されている「七夕さんの着物」を発見したのは、昭和42年8月7日。報告するまで民俗学者にも知られておらず、また地元の方々も、全国でも珍しい民俗行事であることに気付かれていませんでした。

★朝来市生野町に伝わる七夕飾り
江戸時代には天の織姫に小袖を捧げて裁縫の上達を願う“貸し小袖”の風習がありました。姫路や生野の紙の着物は、近世の七夕文化を受け継ぐものと思われます。生野の七夕飾りは一旦、廃絶しましたが、今また見事に復活を果たしています。7月上旬に生野を訪ねると、古い町並みに七夕飾りが立ち並ぶ情緒豊かな風景に出合えます。

高度経済成長期を境として、地域が伝える七夕まつりは退潮へと向かいましたが、今、また復活に取り組む町も増えています。
ここに紹介する七夕飾りは、二本の笹飾りの間に、細竹やオガラ(麻の茎)を渡して、「七夕さんの着物」、あるいは「七夕さん」と呼ばれる紙衣をずらりと並べ飾るもので、不思議なことに、かつて塩田で栄えた姫路市妻鹿から高砂市曽根町に至る播磨灘沿岸の町々、そして銀山で栄えた朝来市生野町にだけ伝承されています。昭和30年代頃までは、行事が終わると、七夕飾りはすべて近くの河川や海へと流されていました。そのため、古い資料が残されることは少なく、今回、歴史工房に展示する七夕飾りは、私たちのふるさとに伝わる七夕を知る上で、貴重なものといえるでしょう。

兵庫県立歴史博物館の1階“歴史工房”はフリー入館スペースです。「ふるさとの七夕」は、8月30日まで展示がありますので、暑い季節ですが、お運びいただければ幸いです。
http://www.hyogo-c.ed.jp/~rekihaku-bo
http://www.hyogo-c.ed.jp/~rekihaku-bo/images/h270709-tanabata.pdf

七夕の贈りもの~梶の苗木~

七夕のとわたる船の梶の葉にいく秋書きつ露の玉づさ(藤原俊成卿の七夕の短歌)

その昔、七夕の歌や願い事は梶の葉に書かれていました。ひと月遅れの七夕には、日本玩具博物館でも七夕飾りを立てますので、その折に梶の葉があれば、古式ゆかしくて嬉しいのだけれど…とあちらこちらの会で話しておりましたところ、日本玩具博物館ちりめん細工の会講師の南尚代さんから、可愛らしい梶の苗木が届きました。ご自宅の梶の大木から育った苗木なのだそうです。ぜひ、館の庭のどこかに植えて下さいと、なんと情趣のある贈り物でしょうか。

7月7日が明ける夜には、その苗木から、手のひらよりも小さな梶の葉を二枚だけいただき、水に浮かべて星まつり。あいにくの空模様でしたが、梶の葉のかわいらしさが嬉しい夕べでした。

南さんに感謝を込めて、その苗木は、6号館とらんぷの家の間の庭に植えて、大きく育てようと話しています。

(学芸員・尾崎織女)

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