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館長室から 2012.04.26

伊藤三朗コレクション・中国民間玩具を受け入れました

当館の1号館周辺を美しく彩っていた八重桜の関山も落花盛んです。入り口付近はまさに花びらの絨緞を敷いたような雰囲気です。椿や桜の花の季節は終わりましたが、周辺はみずみずしい新緑に包まれ、シャガの花や白と黄色の山吹の花が彩りを添えています。


さて<ブログ「館長室から」2012年3月29日>でも報告しましたが、中国の民間玩具収集家として有名な名古屋市在住の伊藤三朗氏が収集されたコレクションを受け入れることになり、去る4月16日に当館に到着しました。伊藤氏はこの5月で80歳になられますが、定年後に北京中央民族大学と貴州大学に留学され、文化大革命(1966~76)後の民間美術復興活動で再現された伝統的な人形や玩具を中国各地を旅行して収集されたほか、中国の民間美術学会の年次総会にも再三出席され、各地の研究者の協力を得て、土人形、土笛、木製玩具、布製の虎、人形、干支玩具、各地の仮面、凧など約1000点にも上る貴重な中国の民間玩具を収集されました。何よりもこのコレクションが貴重なのは、これらの資料が中国美術学会民間工芸美術委員会の協力のもとに産地、名称などが正確に記録されていることです。

整理中の尾崎学芸員

新中国誕生(1949年)後の文化・芸術方針によって、農民の文化を伝承するために長期にわたり民間美術等を収集し、村々の「群衆文化館」で大切に保管されていました。それが文化大革命中に紅衛兵の襲撃によって民間美術は破壊されたのです。そして文革の後の民間美術復興活動の第一線で活躍されたのが故李寸松先生でした。

当館の中国民間玩具コレクションは、24年前に受け入れた尾崎清次コレクションの中に1930年代の貴重な中国民間玩具約300点が含まれており、私自身も1993年に浙江省で開催された中国民間美術学会総会に参加するなどして中国の民間玩具を収集してきました。故・李寸松先生が来館された際にも数々の資料の寄贈を受けましたので、今回の寄贈品を合計すると新旧1,600点を超える数量になり、国内屈指の中国民間玩具コレクションが構築されたといえそうです。

文化大革命後に復活した民間玩具の多くは、2002年から始まった市場経済の影響によって、製作や技術の伝承は残念ながら厳しい状況におかれていると聞きます。伊藤氏も「歴史のほんの一瞬の僥倖のときに、貴重な民間玩具を日本に残すことができた」と話されています。同氏は当館にも何度か来館されたことがあり、昨年3月に発行された日本人形玩具学会機関誌『人形玩具研究NO21』に収集の中国民間玩具について報告されるとともに、収集品は当館に寄贈すると発表されていました。しかし膨大な数量の資料を直ちに受けいれることが出来ず、今回、仮の収蔵施設が確保できたことによって受け入れました。資料到着後、尾崎学芸員を中心に資料のチェックが行われていましたが完了しました。<ブログ「学芸室から」2012年4月26日>で詳しく報告されていますのでぜひご覧ください。これら資料は来年秋に特別展を開催、公開する予定です。

伊藤氏からの中国民間玩具の数々

貴重な資料をお寄せ下さった伊藤氏の労をねぎらうとともに、心から感謝を申しあげます。

(館長・井上重義)

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