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blog佐野美術館「ちりめん細工の世界」展によせて
■あすから3月です。当館の庭も急に春めきました。椿の花がつぎつぎと花開き、万作の花も満開です。地表にはユキワリイチゲや福寿草の可憐な花も咲いて春の気配があちこちに漂っています。
■1号館の企画展「ふるさとの雛人形」が昨日から始まりましたが、それを待ちかねたかのように大勢の皆様がご来館くださいました。5号館は昭和30~40年代のお雛様、さらに6号館は「雛まつり~江戸から昭和のお雛さま~」と館内3館で雛人形が見られるとあって、存分に雛人形の世界に浸り、早春の花々に至福の時間を過ごしていただいています。何人もの方から「すばらしい展示ですね」「お雛様だけでなく懐かしいものがいっぱいで楽しかったです」と嬉しいお言葉をかけていただき、6号館前の感想ノートにも「お雛さんが素晴らしい」「感動しました」と書かれていました。いつも思うことですが、博物館はいろいろな意味で来館者を満足させる魅力的な資料をもち展示することが大切であることを再認識した次第です。
■去る20日から当館資料による特別展「ちりめん細工の世界」が始まった静岡県三島市の佐野美術館にも大勢の方がお越し下さっています。嬉しいことに初日の講演会も定員オーバー、また当館ちりめん細工講師による体験講座(4回)も早々と満席になり締め切られました。このようなことは最近では珍しいです、と佐野美術館の担当者の方にお聞きしました。
■この展覧会は伊豆稲取の雛の吊るし飾りの影響でちりめん細工に関心が高いこの地域の皆さまに、質の高い本物のちりめん細工を一人でも多くの方に見ていただきたいという私の考えから、同館にお願いをして実現をしたのです。というのも初日の私の講演「ちりめん細工の再興活動について」のなかでもお話したのですが、私たちが長年に亘り日本女性の美意識や造形感覚を表現した手の技の芸術品として再興に取り組んできたちりめん細工が、ここ数年来、中国製のまがい物が「ちりめん細工」の名で京都をはじめ各地の観光地で売られるようになって、ちりめん細工=安物の土産品というイメージが広がり「悪貨が良貨を駆逐する」状況が生まれているからです。その払拭には、一人でも多くの方に本物のちりめん細工をご覧いただき、その素晴らしさを認識いただくことが大切だと思うのです。
■今回の展示は2007年に開催したたばこと塩の博物館での展示を上回る規模と内容です。 新しい収蔵品も沢山出品しており、皆さまの感動を呼び起す展示であると思います。ぜひお誘いあってご覧下さい。
■また雄鷄社から私の監修で出版し、同社倒産後は絶版になり入手不可能になっていた『四季を彩るちりめん細工』『和の布遊びちりめん細工』『ちりめん細工季節の吊るし飾り』の3冊を当館が著作権を買い取りこの展覧会に間に合うように再版しました。いずれも古書市場で高値がついている本ですが、会期中は佐野美術館でお求めいただけます。
(館長・井上重義)
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