日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2022.11.29

玩具文化へのまなざし――世代を超えて

2014年から神戸市長田区にある神戸常盤大学教育学部こども教育学科で「玩具と文化」と題して、15回の授業をもたせていただいています。将来は保育や教育の現場で子どもたちを導いていく仕事に関わりたいという志をもつ若い人たちに、子育ての道具であり、また文化伝達の機能をもった玩具について、歴史的な成り立ちを学んでいただく講座です。「歴史を知ることで、21世紀にアナログなおもちゃは残されていくのかどうか、それを探究してみたい」とか、「ものにこめられた呪術性ということに興味がある」とか――そんなことを表明してくれる学生もいて、個性豊かな90人のまなざしに接する月曜日は、令和時代の感性に触れる刺激的な時間ともなっています。

講座では、世界の玩具文化を探究する視点についてお話ししたあと、日本の古代から中世、近世と玩具の歴史を辿ってきて、先日は3時間続きで、『江都二色』や『守貞謾稿』や『還魂紙料』など近世の文献に記された❝手遊び(おもちゃ)❞の復元製作を行いました。

阿弥陀如来が来迎するごとく、筒のなかから現れる「御来迎」の製作では、この仕掛けを応用してもうひとつ作るなら?という構想図も書いてもらいました。そのイメージには、若い人たちの内面や時代性が現れていて、しみじみした気持ちにさせてくれます。―――12月は、節句行事と人形玩具文化について、さらにクリスマスの造形について話を進めていきます。実際に役に立つ知識や技能を身につけることは大事だけれど、モノの背景を知る楽しさや、玩具がそうであるように、無くても困らないかもしれないものごとに対しても、心を傾けることのできる幅の広さをもっていただけたら嬉しいなと願いながら・・・。


そして、先週末は、昨年に引き続き、放送大学の面接授業のご依頼をお受けして、「玩具とめぐる歴史と文化」と題する8コマ続きの講座をもたせていただきました。一日目は、「放送大学・姫路サテライト」がある<イーグレ姫路>の教室で、二日目は日本玩具博物館で。20代から70代まで、様々な世代の方々が相集い、一瞬も気を抜かずに真剣に向き合って下さるので、何とかお応えしたいと話す言葉に力がこもります。「玩具の歴史をたどることは私たちの生活史をたどることだと気づきました」とか「介護や家族のことに一生懸命だった歳月を超えて、今、やっと学べる喜びを感じているのですが、その始まりにふさわしい楽しい、楽しい時間でした!」とか、帰り際にそんな嬉しい感想をいくつもいただき、ほっとすると同時に、玩具たちがもっている大きな力にあらためて感じ入りました。

これからも、館の内外で、世代を超えて玩具文化について語らう機会を大切にしたいと思う秋です。

(学芸員・尾崎織女)

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