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館長室から 2020.04.24

初夏の特別展「端午の節句飾り」について

当館の入り口に植わっている遅咲きの八重桜関山が満開を過ぎて落花盛んですが、館内の庭には、白山吹やシャガの花が至るところに咲き乱れて春爛漫です。しかし残念ながら、新型コロナウイルスの感染拡大の影響から、当館にも休館要請があり、4月7日から5月6日まで休館しています。
本来ならば6号館で、初夏の特別展「端午の節句飾り」を去る17日からご覧いただけましたのに残念です。展示は江戸末期から昭和初期までの、質の高い甲冑飾りや武者人形など30組がずらりと並び、当館でないと見ることができない素晴らしい展示です。借用資料は1点もなく、すべてが当館の所蔵資料であり、購入資料と寄贈資料による構成です。展示品は裕福な家庭で飾られていた豪華で格調高いものです。

6号館西室の展示

開館当時、当館の収集対象は郷土玩具や駄菓子屋の玩具のような、庶民の子供たちのものが中心でした。しかし平成7年の阪神淡路大震災で、裕福な家庭で飾られていた雛人形などが、文化財として認識されずに処分される状況を知り、以後、それらの収集に取り組んできました。当館の姿勢が皆さまにも理解され、その後、貴重な資料の数々が寄贈で届きました。
この度の展示でも、大型の武者人形5組は寄贈品です。高さ70㎝もある神功皇后と武内宿禰もその1組で数年ぶりの展示です。

明治初期の神功皇后と武内宿禰

甲冑飾りで江戸末期から大正期頃までのものは、太鼓胴型の鎧櫃の上に甲冑が飾られていることに気付き収集してきました。寄贈は少なく、殆んど購入品ですが約30組にもなり、おそらく国内屈指のコレクションだと思います。そのいくつかには、大阪の心斎橋周辺の人形屋(谷本要助・やわたや吉兵衛・?木新助・ひなや友七・吉仙商店・今村屋籐兵衛)の名が記され、幕末から明治時代にかけての大阪は、甲冑飾りの一大生産地だったと考えられます。

幕末から明治時代の太鼓胴の甲冑飾り

四角い箱型の上に飾られた甲冑飾りは大正時代から作られ、京都・大阪や東京の人形屋で作られましたが、この度の展示では、有名な大木平蔵店(京都)の京都製甲冑飾り2組を展示しており、高さ90㎝のものは初公開です。残念ながら東京製の甲冑飾りの展示は1組のみです。
東室では御殿飾りの展示を継続しており、大正期から昭和30年頃までの豪華な御殿飾りが13組並び、6号館の特別展会場では昭和初期頃まで裕福な家庭で飾られた雛人形(東室)と端午の節供飾り(西室)が一堂にご覧いただけ、その素晴らしさに感動されると思います。
新型コロナウイルスの感染が収束し、連休後には開館できて、皆様の心をいやすことができることを心から願っています。

(館長・井上重義)

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