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blog<新収蔵品紹介>宮参りの帽子・お食い初めのよだれかけ
◆日本玩具博物館では、ここ数年、初宮参りや七五三などの通過儀礼の折に使用された祝い着や帽子、よだれかけ、守り袋(巾着)などの手づくり資料を収集しています。この度は、当館とおつきあいのある方を通して、初宮参りやお食い初めに着用された帽子やよだれかけ、約20点を入手いたしました。
◆初宮参りは、生後一ヶ月の頃、赤ん坊の誕生をうぶすな産土かみ神に報告し、正式に氏子となるための儀式で、多くの地域で男児は31日目、女児は32目に行われます。この儀式には、一般に、男児は五つ紋黒羽二重・大名袖の祝い着、女児は五つ紋裾文様・縮緬の祝い着が用意されます。あわせて、魔除けの赤や吉祥文様をあしらった帽子やよだれかけも作られ、厳かな儀式を愛らしく彩りました。明治時代、男児には、後ろ側に縁飾りのある二枚の「しころ」布を垂らした頭巾が魔除けの力を持つとして、人気がありました。
◆お食い初めは、一生、食べものに不自由由しないことを願い、生後100日目、赤ん坊に歯がはえ始めた頃に行われる儀式です。祝い膳に赤飯や尾頭付きの魚などを並べ、赤ん坊に食べる真似事をさせるものですが、かつては母親たちが手作りしたよだれかけが着用されました。今回、入手したものは、裁った着物の残り裂(縮緬・錦紗・金襴・緞子)を「きりばめ細工」の手法を用いて縫いつなぎ、二匹の鯛や松と座り鶴、獅子舞と牡丹などの絵柄を作るもので、縁飾りがもうけられています。
◆二匹の鯛は、「祝い鯛」といわれ、中国から伝わった吉祥の図柄。中国で魚は「yu」と発音します。この音が余裕の「余」に通じることから、余剰、豊穣を意味するおめでたい造形と考えられました。中国文化の影響を受けた「祝い鯛」は、目出「たい」意匠として、日本庶民にも広く親しまれ、将来の豊かさを願うお食い初めの儀式にふさわしいものと考えられていました。
◆現在、群馬県立日本絹の里において「子どもの晴れ着とちりめん細工展」を開催中ですが、当館においても、女性たちが伝えてきた子どものための手芸資料を通して、着物文化が豊かだった時代の子育ての習俗を紹介する企画展をもってみたいと思っています。
(学芸員・尾崎織女)
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