雛人形の春あれこれ | 日本玩具博物館

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学芸室から 2016.03.21

雛人形の春あれこれ

サクランボの花とメジロ

日本玩具博物館の庭はサクランボとアンズの花が満開。毎日、メジロの群れがやってきて熱心に蜜を吸っています。今冬は一羽のシロハラが博物館の庭をテリトリーにしているようで、落葉や下草をつついては冬眠中のミミズやカエルを引っ張り出して食べる姿を庭のあちらこちらで見かけます。まるいお腹をさらにまんまるにしてちょんちょんと飛びまわり、人が1メートル近く距離を詰めても動じる様子もないので、私たちはシロハラの“ぽんちゃん”と呼んでそっとかわいがっています。寂しいことに、シロハラは本格的な春がやってくると北へ帰っていく渡り鳥。今しばらくの玩具博物館滞在でしょうか。

マンサクの花越しのシロハラ

玩具博物館は新暦3月3日の桃の節句を過ぎても、さらに華やかにお雛まつりを継続中……。連日、雛人形展を目指してご来館下さる方々があります。展示中の雛飾りの7割近くが、ご縁あってご寄贈を受けた資料です。今回の展示には、昨年度に収蔵させていただいた御殿飾り雛(明治後期製)と白木の源氏枠飾り雛(大正後期製)を出品しているのですが、先日はこれらの雛飾りのご寄贈者が相次いで会場をお訪ね下さいました。

6号館の展示ケースは奥行90cm。例えば、明治後期の御殿飾り雛は、高さ90cm、奥行72cm、幅180cmの大型であるため、充分に段組みを行い、細やかな雛道具の数々をずらりと並べ飾るにはスペース不足なのですが、ご寄贈下さったご家族は、雛飾りが展示されている様子を非常に喜び、懐かしく、誇らしくご覧下さるのです。その様子に接し、私たちも本当にうれしく思います。館の資料登録簿などをお見せしたりして、さらにご家族から雛飾りについての思い出などの聞きとりをさせていただけるので、寄贈者のご訪問は、博物館資料の背景を充実させていく機会でもあります。


高砂こども園の青い目の人形と雛人形

一方、この時期はご家庭や施設で所蔵する雛飾りをどうしたらよいかという相談のお電話を日々、頂戴します。“人形供養”を行っておられる寺院や神社などをご紹介したり、ご家庭でのご供養のやり方をお伝えしたり、そのままお持ちになられるときには、人形を傷めない梱包の方法をお伝えしたり、また資料として生かせそうな雛飾りについては、引き取りに伺ったり、また他の施設へのご紹介を試みたり……と様々な対応をしています。

先日は、尊敬する知人を通していただいたご依頼――古い雛人形についての相談に与るため、「高砂こども 園(保育園+幼稚園)」を訪問しました。そこは、明治42年創立の古い幼稚園。私たちの世界では“青い目の人形”を所蔵しておられることで有名です。

昭和2年、日露戦争後のきな臭さを増す世界情勢の中、“世界平和は子どもから”の理念のもと、日米間の緊張を文化的にやわらげようと人形使節が計画されました。アメリカ合衆国から12,000体を超える数の青い目の人形が日本の子どもたちに贈られ、その答礼として、日本からは58体の市松人形が贈られたのです。青い目の人形は日本全国の小学校や幼稚園にプレゼントされましたが、日米開戦後は敵国の人形として虐待を受け、また戦争の混乱の中で失われていきました。

そんな中、心ある方々の手によって 隠され、守られて今日に命をつないできた青い目の人形は、現在のところ、331体が確認されています。兵庫県には12体(11体が県内保管)が残され、高砂こども園はそのうちの2体を受け継いでおられるのです。高砂こども園にのこされた2体の青い目の人形、ヘレンとエリカは傷みがあったため、お化粧直しされ、復元された衣装を着せてもらって、今、職員室の飾り棚に幸せそうに収まっています。その表情から、園の方々に愛され守られていることがよく伝わります。誕生し、日本に渡ってきて90年――これらの人形に託された多くの方々の思いとともに、なお一層、大切に考えていくべき小さな文化財です。

高砂こども園は、人形を愛する園として知られているためか、長い歴史の中で人形類の寄贈も多く、今、それらのその扱いに悩んでおられるとのこと。園に遺しておかれる昭和初期の武者人形の型崩れを直す梱包をさせていただき、またいくつかの雛人形については日本玩博物館の方で 保存させていただくことになりました。

高砂こどもからお預かりした大正時代の雛人形

春爛漫、旧暦桃の節句の催しあれこれ

貝合わせのワークショップや展示解説会などの行事も順番に終わっていきますが、ひと月遅れの雛まつりなら4月3日。旧暦で祝うなら、今年、太陰暦3月3日は、太陽暦4月9日ですから、本来なら、桃の節句はこれからが本番です。

3月26日(土)には、兵庫県立福崎高等学校の吹奏楽部とコーラス部の皆さんをお迎えして演奏会を開催いたします。緋桃の花がほころび、シロハラの「ぽんちゃん」が跳ねまわる玩具博物館の庭に、吹奏楽部による華やかな春のメロディーとリズムが響きます。雛飾りをほどこしたランプの家の縁側に座って、吹奏楽をお楽しみいただいた後は、雛人形展開催中の6号館展示室で、コーラス部による合唱をお聴き下さい。やわらかい歌声が展示室をつつんでくれることでしょう。どうぞお誘い合わせのうえ、ご来場ください。演奏時間は午前11時30分からと午後1時30分からの2回です。

(学芸員・尾崎織女)

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