日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2016.05.02

春紫菀(ハルジオン)の野原から 

爽やかな薫風が駆けぬける頃となりました。皆さまにはゴールデンウィークをいかがお過ごしでしょうか。玩具博物館はご家族連れのご来館者も多く、プレイコーナーからは明るい笑い声が響いています。

栴檀や樫、楠の木に囲まれた館の臨時駐車スペースは、今、一面に春紫菀の花が咲いています。花の蜜を求めてアオスジアゲハが飛びかい、とてものどかな晩春の景色。子どもの頃、春紫菀の花をたくさん積んで花冠を作ったことを思い出し、来館の女の子たちを誘って花冠を作りました。どの子にも本当によく似合って愛らしい。野の花の冠や花輪と言えば、白詰草を思い浮かべますが、やわらかい茎をもった花なら、白詰草と同じように編めるので、いろいろな色の花を集めたら、とても華やかな花冠になるし、作った冠に後から花を挿し入れてもよいです。今の季節、心が穏やかになれる野遊びです。摘み草をしながら、お子さんと一緒に楽しまれてはいかがでしょうか。

さて、このような草花遊びについて、今はどのようなものが子どもたちに知られているのでしょうか。

平成11(1999)年の夏、日本各地に伝承される草花遊びの企画展を開催した折、夏休みの来館者を対象に春夏秋冬の草花遊びについて、どの世代がどのようなもので遊んでいるかを調査したことがありました。小中学生には、季節別に列記した遊びの中で知っているものに○をつけていただき、誰に教えてもらったか? を質問しました。大人の回答者には、子ども時代を過ごした都道府県をマークしていただいた上で、もっとも思い出に残っている草花遊びは何か? 子どもたちは自然の中で遊ばなくなったと言われるがその原因についてどのように感じておられるか? 四季折々の遊びを今の子どもたちに伝承していきたいか?という質問に答えていただきました。その夏、小学生から80代までの1390人が、展示を見ながら熱心に回答を寄せて下さり、私たちは草花遊びの現状をよく理解することが出来ました。

平成11年度「伝承の草花遊びアンケート報告」

当時、小学生も含めて6割以上が「遊んでいる」「懐かしい」とマークしたものは――春はレンゲの首飾り、白詰草の花冠、ペンペンぐさのがらがら、四つ葉のクローバーさがし。夏は笹船、ほおずき遊び。麦わらの蛍かごは、当時の60代以上は6.5割の方は懐かしいと回答されましたが、40代は1割、30代は1割以下という結果でした。これは、全国的に麦畑が減少する時期と一致していて、生活環境の変化が子どもの遊びに影響を与えていることがわかりました。秋はどんぐりのコマやヤジロベエ。冬は竹とんぼ、竹馬。誰から遊びを教えてもらったかという子どもたちへの質問に対しては、母親、年上の友達、祖母、祖父、近所の大人が順に多く、学校や幼稚園という回答もありました。

大人の方々への質問によって当時、思い出の草花遊びベスト10は、①レンゲの首飾り、②白詰草の花冠、③笹船、④四つ葉のクローバーさがし、⑤オオバコずもう、⑥カラスノエンドウの笛、⑦竹とんぼ、⑧ぺんぺん草のがらがら、⑨どんぐりコマ、⑩竹鉄砲でした。

子どもが伝承的な遊びをしなくなったと言われる、その原因についてどのように感じておられるか――については、社会の近代化や生活の自然離れなどをあげる方々が400名以上あり、郷土文化の均質化、地域性の喪失、作るより買うことを選ぶ消費社会への傾倒などを社会問題として論じられる回答者も多数ありました。刺激の強いコンピューターゲームの普遍化、塾や習い事などが子どもの自由な時間を束縛する現実、外遊びの危険性が高くなり、子どもの暮らしが室内化したことをあげる方も少なくありませんでした。一方、異年齢集団と遊ぶ機会が減少や昔ながらの遊びを教える伝承者の不在を問題視する方もありました。―――この調査からすでに15年が経過した今、子どもを取りまく環境はさらなる変化をとげ、その問題は深くなったように感じられます。(尾崎織女)

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