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館長室から 2020.09.03

尾崎織女学芸員著の『世界の民芸玩具』に感動

尾崎織女学芸員が8月20日付の<ブログ「学芸室から」>で、9月15日に大福書林から出版される『世界の民芸玩具』について紹介していますが、その本が一足早く私の手元にも届きました。
B5版160頁で装丁も素晴らしく、感動しました。本の帯には「時代に取り残され、消滅しようとしている民衆芸術にいま、光を当てる」「田舎町の私設博物館が世界の人々とともにつくりあげた20世紀の民芸玩具コレクション。木、土、木の実、麦わら、ヤシの葉、ヒョウタン、紙……身近なものを使った多様な表現を通して、世界の造形文化を旅する。」と記載されています。

『世界の民芸』と『世界の民芸玩具』

当館は昭和47年に朝日新聞社から出版された『世界の民芸』を所蔵しています。この本は「週刊朝日」に昭和45年1月~46年12月まで連載された記事をまとめたもので、浜田庄司・芹沢銈介・外村吉之助と著名な三名が執筆され、紹介されている作品は日本民芸館・倉敷民芸館・熊本国際民芸館と個人所有による民芸品212点です。

この度、出版の『世界の民芸玩具』は当館が所蔵する世界の玩具の紹介ですが、同書と比べても、決して遜色のない素晴らしい出来栄えで、私自身感動しました。『世界の民芸玩具』は『世界の民芸』の姉妹書として後世に遺る書籍として高い評価を受けると思います。

当館が世界各地の玩具や人形の収集に取り組んだのは開館3年後の昭和52年からです。2年後の54年が国際児童年と知り、同年に世界の玩具展が開催できればと考えたとき、幸いにも北海道教育大学の伊藤隆一先生が『世界のおもちゃ』を出版され、その後、先生と知り合い、先生の協力を得て「世界の玩具展」は大成功しました。

赤い鬼たち(メキシコ・オアハカ州)

それを契機に世界の玩具の収集に取り組んだのです。時期に恵まれ、160ケ国から3万点もの膨大な資料の収集に成功しました。本当に収集時期と環境に恵まれました。昭和60年には伊藤先生に誘われて北欧へ玩具事情の調査に出かけ、自然素材の手作り玩具が急速に消えていく状況を知り、その後、何度も海外に出かけて収集しました。

マヨルカ島の土笛(スペイン)

さらに平成の初期頃までは東京にアジア・ヨーロッパ・アフリカ・中南米などの民芸品を輸入して販売する業者がいくつもあり、それらの業者の協力を得て、現在では収集不可能な世界の民芸玩具が収集できたのです。さらに何人もの著名な収集家からの寄贈もあって、膨大な資料の収集に成功しました。

グジェリ陶器の風俗人形(ロシア・モスクワ州)

資料の整理を担当したのは平成2年に就任した尾崎織女学芸員でした。収蔵資料の登録や目録作り、『企画展の記録集1・2・3』や『開館20・30・40周年記念誌』など、大きな仕事をしていただきました。尾崎学芸員の『世界の民芸玩具』を読み、当館が今にあり、大きな評価を受けるまでになったのは彼女のお陰だと心から感謝しています。

          

4号館2階「オセアニア」「アフリカ」の展示風景

世界の玩具は、当館4号館の2階で常時2000点を展示しています。ご来館をお待ちしています。

(館長・井上 重義)

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