素晴らしい雛の名品が一堂に。 | 日本玩具博物館

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館長室から 2021.01.28

素晴らしい雛の名品が一堂に。

蝋梅の花

当館の庭には春の訪れを知らせる蠟梅の黄色い花や椿の花が咲き始め、6号館への小径の上には黄色い甘夏ミカンが鈴なりに下がって皆様をお迎えしています。

中庭の小径の上にはスズラン里の甘夏ミカン

春恒例の6号館での特別展「雛まつり」が始まりました。今年のテーマは“江戸と明治のお雛さま”です。江戸末期や明治期に京都や江戸(東京)で作られた格調高い雛人形の名品が20余組も一堂に並びました。春になれば各地の博物館施設で雛人形展が開催されますが、これ程の質の高い江戸期や明治期の雛人形の名品が一堂に展示されるのは珍しいと思います。

開館後、当館が収集の対象にしていた雛人形は全国各地で作られ、庶民の家庭で飾られた張り子や土人形など郷土玩具の雛人形でした。裕福な家庭で飾られていた高価な雛人形類の収集に私が本格的に取り組むようになったのは1995年の阪神淡路大震災後からでした。

震災後、県などの公的機関が文化財の救出活動を展開しましたが、残念ながら子どもや女性に関わる雛人形などは対象とならず、被災地の方からそれらが粗大ごみとして処分されている、救済に立ち上がってほしいとの要望に応えて受け入れを始めました。そして当館ならと信頼されて、京都の大木平蔵製など第一級の雛人形が続々と届きました。今回展示の明治時代の大木平蔵製の御殿飾り2組も寄贈で届いたものですが、1組は著名な酒造会社の家庭で飾られていた豪華な雛飾りです。

3組も展示された玉翁の古今雛

それを契機に当時の裕福な家庭で飾られた雛人形の購入にも取り組み、江戸時代末期に作られた享保雛や古今雛の入手にも成功したのです。なかでも江戸人形師が作った古今雛には、目に硝子玉や水晶玉を埋め込んだ「玉眼」の手法が用いられていましたが、京都製の古今雛には玉眼が使われていませんでした。明治初期に東京から京都にきた人形師・玉翁がこの玉眼の手法を伝えたとされています。そのころから、京都製の雛人形にも玉眼が入るようになりました。その玉翁が作った京都製の古今雛を幸いにもこれまでに3組も入手することができたのです。東側の展示ケースにはその3組が並び、皆様をお迎えしています。ご来館をお待ちしています。

(館長・井上 重義)

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