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学芸室から 2021.05.05

節句飾りのデザイン*その2「菖蒲と蓬」~端午の節句展より

雨の端午となりました。近くの沼で採取した葉菖蒲と野原に繁茂し始めた蓬を合わせて、今年も当館玄関口や展示室の屋根に並べ置きました。

古来、端午に用いられる葉菖蒲は、花菖蒲とは異なる種類です。沼に生える葉菖蒲を根から抜くと、果物を切ったときのような香気があります。平安後期以降に成立した短編集『堤中納言物語』には、端午節の“根合わせ”として、東西二方に分かれ、和歌などを詠み合いながら菖蒲の根の長さを競うという、雅やかで一風変わった遊戯の様子が描かれています。葉菖蒲の形が剣にも似ており、その根に薬効があることから、菖蒲は端午節の中心的な役割を担ってきたものと思われます。


先日、中国の清朝終わりに行われていた月次の風習などを記した『燕京歳時記—北京年中行事記―』(敦崇著・小野勝年訳と解説/原典は1906年・平凡社1966年刊)を熟読したのですが、そのなかに、18世紀終わりころの端午の風習のひとつとして次のようなことが記されていました。———「端午の日には菖蒲や艾子(=蓬)を用い、門の傍らに挿して不祥を祓う。いにしえの艾虎、蒲剣の遺意である――と。蒲剣とは、菖蒲を剣の形に見立てたものを言い、屋根に菖蒲を刺したり、束を屋根に上げたりする日本の「菖蒲葺き」の風習につながっていると想われます。
端午節は、いうまでもなく中国で成立した季節の変わり目の厄除け行事であり、6世紀ころの揚子江中流域における年中行事などをまとめた『荊楚歳時記』(宗懍著)には、蓬で人形(ひとがた)を作り、菖蒲を刻んで酒に浮かべて飲み、邪気払いが行われていると記されています。
「蒲剣」「菖蒲酒」「艾(蓬)人」「艾虎」(「今月のおもちゃ・5月」参照)などに用いられる菖蒲と蓬は、本家の中国においてはもちろん、長い歳月を端午節の供えと深く関わり、日本においても平安のころにはすでに大切な植物だったのです。

明治時代以降の端午の座敷飾りにも、菖蒲や蓬があちらこちらにデザインされ、また供え物として造花の菖蒲蓬束が用いられています。


菖蒲にまつわる風習といえば、「菖蒲湯」や子どもたちの「菖蒲鉢巻」などがあります。かつては、旧暦端午ともなれば、かなり盛んに行われていましたが、皆さんのご家庭では今もなさっておられるでしょうか。先年、銀山の町・朝来市生野町在住の友人から、昭和50年代後半ごろ、男の子が端午節に菖蒲鉢巻をしめている素晴らしい写真をいただきました。キリリとしてとてもよいものですね!(尾崎織女)

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