日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2019.04.26

真鯉が泳ぐ展示室

ぐんと気温が上がり、館の庭にも気持ちのいい風が吹きぬけます。6号館の展示室も緋毛氈から緑の毛氈に変わり、初夏の特別展「端午の 節句飾り」が始まりました。今年は「雛まつり」展に展示していた160組の雛飾りのうち、西室に展示していた江戸後期から大正期製の「まちの雛」を収蔵し、半分の展示室に端午の節句飾りをほどこしました。幕末から明治・大正・昭和の各時代に大都市部の町家で飾られた武者飾りと甲冑飾りをテーマに、各時代に人気を博した節句飾りの様式をご紹介しています。また、豪華な衣を身に着けた武者飾りが届かない地方都市や農村部などでかつて人気のあった金太郎の土人形や、張り子の虎、端午の節句にまつわる郷土玩具を合わせて展示しています。

美しい顔の太閤秀吉と加藤清正/西山製(京都烏丸通神屋町)

そして展示室でひときわ目をひくものが、和紙できた全長3m20cmの鯉のぼり!20年ほど前に生野よりご寄贈いただいた手描きの和紙製です。
鯉のぼりが5月の空を泳ぎ始めたのは、江戸時代後半になってからのこと。山田徳兵衛による日本人形史(昭和17年)によると、合戦の時に武将が立てたような大きな武者幟の先に、小さな鯉が付けられている様子が伺えます。江戸時代に生まれた鯉のぼりは紙製で、比較的小さなものでしたが、端午の節句が男の子の幸福を願う行事として盛んになるにつれ、中国の「龍門伝説」にもなぞらえられ、どんどん大きくなっていきました。けれども江戸時代から明治・大正時代に至るまで、鯉のぼりといえば、黒い鯉一匹(旒)というのが一般的だったようです。大正時代に飾られた端午の節句の掛け軸を見ると、幟や吹き流しがはためく青空に、五月の風を受けて黒い鯉が尾をはね上げています。
 
和紙製の資料を天井から吊り下げて展示するのは、なかなか大変な作業でしたが、掛け軸の鯉幟のように、黒の真鯉が悠々と力強く展示室を泳ぐ姿は迫力満点です。


さらに6号館で紹介しきれなかった金太郎人形のプチコーナーを、4号館郷土玩具展示室に設けました。江戸時代末期から明治時代にかけて、端午の節句には、土製や張り子の人形が飾られていましたが、その中でも人気だったのが金太郎です。ふくよかな体型と力強さは、健やかな子どもの象徴として親しまれてきました。青森から鹿児島まで全国で金太郎が作られていますが、面白いのはその怪力ぶりの表現方法です。根をはった松や竹をひきぬく、米俵や釣鐘を担ぎ上げる、熊を押さえつける、鯉にまたがって流れを上る…などなど、重いもの強いもの勢いのあるものとの組み合わせで、金太郎の力自慢を強調しています。

金太郎というと、真っ赤な身体を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。これも力のかぎり!という血色のよさを表わすとともに、江戸時代慢性的に流行した疱瘡(天然痘)をはじめとした、疫病除けの願いが込められているためです。ユニークな表情と勇ましい金太郎軍団をお楽しみください。
そして、6号館東室では、引き続き「ふるさとの雛」も展示していますので、日本各地の春と初夏の節句飾りにおける郷土性をきっかけに、郷土玩具の面白さも再発見していただけたら嬉しく思います。


さて、ゴールデンウィークが始まります!当館では「初夏の光きらきら★ゴールデンウィークおもちゃづくり教室」として、ゴールデンウィークの期間中の6日間でおもちゃづくりを行います。作り方はとってもシンプルですが、楽しく遊べるおもちゃばかりです^^
4月28日(日)ストローのお花ラッパとロケット、29日(月・祝)2枚羽根の風車、5月3日(金・祝)鳴くニワトリ、4日(土・祝)2枚羽根の風車、5日(日・祝)よくあがる折り紙の凧、6日(月・祝)ひらひら蝶々です。各回13:30~と15:00~で30分ほどです。
ご来館いただいた方ならどなたでもご参加いただけますので、姫路へお越しのご予定がありましたらぜひよろしくお願いいたします。

(学芸員・原田悠里)

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