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学芸室から 2021.11.05

「世界のクリスマス展2021」

今冬、37回目となる「世界のクリスマス展」は、北欧の国々(ノルウェー・フィンランド・スウェーデン・デンマーク)やバルト三国(エストニア・ラトビア・リトアニア)のクリスマス飾りをとり上げました。テーマを「甦る太陽の光と希望」として、光の色や形を表現した祝祭のオーナメントの数々をグループごとにご紹介しています。また、展示室には白いクロスを敷き詰めて雪に覆われたヨーロッパの冬を表し、そこに東欧、中欧、南欧の特徴的な資料を展示して北欧のクリスマス飾りと対照させました。


展示ケースの上方から、銀色に塗装した木の枝々を設置し、太陽や雪の輝きや木の実や小鳥を表すオーナメントをつるしてみたのですが、自然感豊かな風景が来館の皆様に好評です。



今日は、仏蘭西菓子研究者の三久保美加さんから、当館の「世界のクリスマス展」へ、青森県弘前市の農園で育った姫リンゴ<アルプス乙女>がたくさん届きました。


16世紀のアルザス地方(当時はドイツ/現在はフランス)では、クリスマスにモミの木を用い、そこにはアダムとイブの原罪を表すリンゴやホスチア(「聖体」となるパンというより、薄く焼かれたクッキー/「オブラーテン」)などがつるされていたようです。18世紀に入ると、宗教的意味合いは薄れ、砂糖菓子や「パン・デピス」などが飾られるようになりますが、19世紀半ばには、リンゴの不作をきっかけに赤い硝子玉のオーナメントも登場します。そこで、硝子玉のオーナメントの前身ともいえるリンゴたちをドイツ製のモミの木ツリーに飾りました。ドイツ製の麦わら細工のオーナメントとともに。太陽と生命を象徴する赤、豊かな木の実の輝き、―――自然物の美しさは格別ですね。


姫リンゴのクリスマスツリーは展示室の真ん中に置きました。ゆったりと来館された方々が感嘆の声をあげ、甘く爽やかな香りを楽しみつつ、「自然の色はほんっとに綺麗ですね…」といつまでも観ておられました。三久保さん、何よりの贈り物をありがとうございました。

社会状況が好転したため、今冬は展示解説会を再開したいと思っています。日時を選んでどうぞご来館下さいませ。

(学芸員・尾崎織女)

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