日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2019.01.19

見て知って、作って遊んで、おもちゃの楽しみ再発見

新しい年を迎え、皆さまにはますますご清祥のことと存じます。本年もどうぞよろしくお願い申しあげます。

今週は館内見学、おもちゃ作り、伝承遊びと3日間を通して香呂小学校の1年生との交流を楽しみました。小雨のふる中、学校から歩いて見学に訪れてくれた70名の1年生。館長の説明と、コマさばきを見たあとは、ワークシートを使ってレッツ見学!4~5人の班にわかれて、1号館から6号館をめぐる子どもたちは目は好奇心いっぱいです。ワークシートの内容は、現在の展示内容に合わせて、1号館「世界の伝承玩具」から、世界のけん玉からお気に入りを絵に描いてもらったり、6号館「世界のクリスマス」でチェコのパン細工のオーナメントを探して、素材をあててもらったり、常設展の4号館2階では、各国で作られている「ついばむ鶏」を探してもらったりと小学校低学年を対象に、展示室も多く、資料も多い当館で、モノをじっくり見て、博物館を楽しむことを知ってもらうために、作成したものです。


6号館で子どもたちを観察していると、写真と同じ飾りを見つけるのも、なかなか大変です。そりゃそうですよね、70本以上のツリーの中、太陽や天使のモチーフはたくさんありますし、気になる飾りやおもちゃもあるので、たどり着きそうでたどり着きません。子どもたちの興味もさぐりながら、ちょっとずつヒントを出してお目当ての資料へと導いていきました^^素材もまずは資料を観察して、わからなかったら、博物館で展示しているモノにはその名前と何でできているか、名札がついてるよと、キャプションの見方も伝えます。

翌日、今度は館長と香呂小学校へ。体育館で70名の子どもたちが館長を囲んでの凧作り教室です。折り紙に厚紙の凧骨をつけてできるとても簡単な凧ですが、よく揚がるので、当館人気のおもちゃ作りのひとつです。角を切る、顔を描く、凧骨をちょうどいい場所に貼る、凧にするための大事な工程には、工作の基本がつまっています。穴に通して結ぶのが一苦労、それでもみんな満足のいく凧ができあがり、運動場で思いっきり自作の凧あげを楽しみました。

そしてこの日はもう一人、凧名人のTさんもゲストとして登場され、連凧やだるまや鶴を描いた大きな凧を、子どもたちに見てもらおうと持ってきてくださっていました。Tさんは、当館と姫路市が共催で2012年まで38年間行っていた全国凧あげまつりの常連さんだったこともあり、館長とも旧知の仲です。40枚の連凧が勢いよく揚がり、1年生、見学にきた2年生の大歓声があがったのもつかの間、15分ほどたつと、風がやんでしまいました。「風よふけ~!」と皆で祈りましたが、空は穏やかな晴れ間をのぞかせるだけ。あっという間に終了のチャイムが鳴ったとたん、また強い風が吹き始め、最後にもう一度連凧をあげることができました!遊びたい時にいつでも遊ぶことができるおもちゃもあれば、凧のように思い通りにいかない、自然の力を待つ時間も遊びのひとつだと思います。風がやんでしまい、「大きな扇風機があればいいのに~」と退屈気味に言っていた子どもたちも、最後は「風や!いまや!」と待ったからこその楽しさを知ってもらえたのではないかと思います。Tさんは「凧あげはだいたいそんなもんや。またあげにきたるよ」と笑顔で帰っていかれました。

さらに今日19日は、香呂小学校のオープンスクール、「昔あそびを楽しもう」が行われ、お手伝いに行ってきました。1年生の祖父母の方々が竹とんぼ、コマ、羽子板、あやとり、おはじき、お手玉、カルタ、だるま落とし、ヨーヨーなどの伝承玩具を子どもたちに教えながら一緒に遊ぶ恒例行事です。祖父母の方々にまじり、子どものころ学童保育で伝承玩具を遊びつくしたわたしもヨーヨーの担当として子どもたちと楽しみました。
ヨーヨーはハイパーヨーヨーやプラスチックの巻き取りやすいヨーヨーでなく、木のシンプルなヨーヨーなので、うでのスナップ加減でヨーヨーが傾いたり、糸を巻き上げる力が弱くなるとすぐにとまってしまいます。コツをすばやくつかむ子もいれば、なかなか思うようにできない子も。一緒に手を持って糸を巻きあげる感覚を知ってもらいながら、子どもたちに教えていると、自分自身がどうやって遊びを覚えてきたのかを思い出すきっかけにもなりました。伝承玩具の多くは、ちょうどいい加減を身体で覚えるものが多く、その適当さは何回も何回も練習して、毎日遊ぶ中で工夫して自然に身についていくものです。そしてシンプルな作りや遊びだからこそ、基本のかたちからいろんなルールや独自の遊びが生まれてきます。今日の行事が昔遊びという一度きりの体験としてではなく、毎日の遊びと結びつきながら、新たな伝承玩具の世界が生まれるといいな~と感じました。

(学芸員・原田悠里)

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