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blog来館者からの贈り物
●新型コロナウィルス感染拡大防止のための海外からの入国制限が撤廃され、当館へも世界各地から来館者をお迎えしています。来館者空間とスタッフ空間が分断されていない当館では、日常的に来館者とスタッフとの触れ合いがあり、そうでなくても、井上館長は来館者のもとへ飛び出して行って大歓迎を示し、楽しく館内のご案内をするため、訪問者との距離がぐんと近いのです。博物館の設立趣旨をお伝えしたり、展示品についてご紹介したりすることはもちろん、海外の方ともなれば、日本の郷土玩具をプレゼントすることもしばしば。
●先週末も、5月に当館をご訪問くださり、帰国したら「チェンマイから郷土玩具を贈ります」と約束してくださったタイ人のJ.C.さん(Tikさん)から、幸便に託して、チェンマイの素朴な手作り玩具が送られてきました。地域伝承の手づくり玩具は、どちらの国や地域においても、見つけにくくなっています。そのようななかで、チェンマイらしい竹細工のいろいろを村の市場などで購入してお送りくださったようです。「あなたがたの博物館にとても感銘を受けました。機会があれば、また訪れてみたいと思います」と美しい日本語を添えて。主なものをご紹介します。
竹と木の実の回転玩具 ブリューゲルの『子供遊戯』に描かれた「胡桃風車」
●なかでも心惹かれるのは、竹とんぼと木の実(種)を組み合わせた回転玩具です。竹とんぼの軸に、中身をくり抜いた木の実がさしてあり、軸には紐が結び付けられています。木の実を持って紐をひっぱり、手を離すと、風車のごとく竹とんぼが回転します。回転が再び糸を巻き取るので、繰り返し、風車を回して遊ぶことが出来るおもちゃです。16世紀、ネーデルランドの画家、ピーター・ブリューゲルの『子供遊戯』のなかにも、これと同じ仕組みの玩具「胡桃風車」が描かれています。また当館は、スリランカから来訪された方からの寄贈で、同地に伝承される木の実風車を所蔵しています。——きっと、世界の各地に同様のおもちゃが存在している(た)ことでしょう!
●当館にとって、海外からの訪問者が収集活動にご協力くださる例は非常に多く、6月初頭のブログでご紹介したスペインからの来訪者や、タイのJ.C.さんをはじめ、広い世界に暮らす皆様の温かい意思によって日本玩具博物館は支えられています。いつも思い起こすのは、1990年代初頭にロシアから来訪された方から贈られた言葉ーー「この博物館の展示は平和な社会の縮図のようです。子どもの幸せを願う心を呼び覚まし、素朴な造形がもつ美しさを知らせ、ここに私の故郷の品を置きたいという感情を引き出す力があります」と。とくに民芸玩具には、産地のアイデンティティに関わる象徴的な意味が込められているため、異国で故郷の造形に出合う喜びは格別なものとなるのかもしれません。一方で、玩具に表現される自然や神々への畏れ、病魔への恐怖と回復への願い、次代を担う子どもへの希望といった人類共通の心情を感じて、風土や歴史が大きく異なる国々の文化にも敬意と親しみを抱き、玩具を通して世界中の人々と心を通い合わせることが出来るのだと思います。
●このような「モノ」を介しての博物館らしい国際交流をとても大事に想う日々です。
(学芸員・尾崎織女)
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