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blog当館の郷土玩具527件、浦添市美術館へ出発!
●先のブログ「学芸室から」でご報告しておりましたように、来る9月17日より、浦添市美術館の「なつかしの日本の郷土玩具展」が始まります。浦添市は沖縄本島中部と南部の境目に位置し、南に接する那覇市のベッドタウンとして大きな人口を抱える町です。また、浦添市は琉球王国発祥の地であり、12世紀から14世紀にかけての二百年余りを王国の都として栄えた文化の薫り高い古都。一方で、大平洋戦争の末期、1945年の沖縄戦においては、陸軍の総司令部が置かれた首里城(那覇市)を守るための攻防戦によって尊い人命と生活文化が失われ、深い深い悲しみの歴史をもつ町のひとつでもあります。
●浦添市美術館は、八角形のドーム屋根と高い塔の建物外観が特徴です。常設展示室と企画展示室が設けられ、漆芸品を中心に、絵画や焼物、染織、金工など、のべ2,000件の美術工芸品を所蔵する施設です。この度は、その企画展示室(第1~第3展示室まで)で、「なつかしの日本の郷土玩具展」が開催されます。 浦添市美術館公式サイト (urasoe-artmuseum.jp)
●展示構成などが決定したのが8月上旬。大急ぎで、第2展示室の「琉球の玩具」を準備し、第1展示室の「日本の郷土玩具~北から南へ」は、出品物決定のための展示シミュレーションを行ったうえで、梱包作業を行いました。
●第1展示室では、2018年に三重県総合博物館の「おもちゃ大好き!~郷土玩具とおもちゃの歴史展」にも協力展示した彩り豊かな郷土玩具を地域別にご紹介いたします。第2展示室では、旧田中明氏や旧尾崎清次氏のコレクションを中心に戦前の琉球玩具の姿を『琉球玩具図譜』とともに展示し、第三室では、おおやアート村の「そらテン」に8月31日まで出品しておりました日本各地の郷土凧を中心に、地域別に凧の形や凧絵などに焦点を当ててご紹介する内容です。また第3展示室には、郷土凧と並んで、各地に普遍的にみられる手まりやこまを一堂にご覧いただきます。3つの展示室を通して、琉球の郷土玩具における他の地域の郷土玩具との共通性や独自性が見えてくるのではないでしょうか。
●去る9月1日、当館スタッフとともに、おおやアート村BIG LABOへ展示の撤収作業に出掛けました。展示会期を終え、壁面から4カ月ぶりに下りてきた凧たちはどこか誇らしげで、BIG LABOにおいて、多くの良い出合いがあったことをひそひそと語っているようでした。
●BIG LABOの皆さんとともに凧たちのコンディションチェックを行い、館内に持ち帰ったこれらの品々は、再び、厳重に梱包を施して浦添市美術館へ。凧たちには長期の出張となりますが、令和時代に入って、(凧だけでなく)各地の郷土玩具製作に携わる方々が相次いで亡くなり、産地の多くが廃絶へ向かっている今、まとまったコレクションを多くの方々、特に若い世代の作り手となっていただける方々にご覧いただく機会となることを非常に意義深く思います。
●荷送りのための梱包を施し、全体のパッキングを整えた27の梱包物を、9月4日の朝、日本通運の2トン車で大阪南港に向けて送り出しました。すべての梱包物がコンテナ一基に収められ、フェリーで沖縄へ。
●浦添市美術館での「なつかしの日本の郷土玩具展」は、9月17日から10月29日まで。沖縄県内の皆さま、またご旅行を予定されている皆さま、ぜひ、浦添市美術館へお立ち寄りいただき、表現力豊かな玩具たちとの出あいをお楽しみいただけたらと思います。
(学芸員・尾崎織女)
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