初秋の学芸室だより | 日本玩具博物館

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学芸室から 2023.10.01

初秋の学芸室だより

いつまでも残暑が厳しかった長月が去り、うろこ雲たなびく10月を迎えました。嬉しい来館者との交流、またホームページやメールを通じての研究者の方々と交流、そして所蔵品や所蔵情報の貸出を通じての博物館施設との交流について、いくつかを取り上げてご紹介いたします。

クウェートからの贈り物

今夏、クウェートから遥々ご来館された方が、当館の展示と日本的な佇まいに感激し、また、館長とスタッフのもてなしが嬉しかったからと、帰国後にクウェートのお土産品や遊戯具などをぎっしり詰め合わせた小包を航空便でお送りくださいました。
小包から登場したのは、しっかりと梱包された硝子細工のクウェート・タワー(1979年竣工/クウェートのランドマーク)やキラキラしたダウ船(dhow/インド洋やアラビア海を航行する伝統の帆船)の模型やミニカー、湾岸諸国で楽しまれている盤上遊戯具・カロム(carrom)、ビー玉、象眼のペンケース、ヤシの葉細工の扇・・・。それから、子どもの遊びの風景がデザインされた1994年版dinar紙幣のことなど、中東の子どもたちの暮らしが垣間見られる資料も同封されていました。
こうした来館者のご厚意による寄贈品の数々が、当館の世界の玩具コレクションに深みを与えてくれるのです。Suhailah Faisal Almutawaaさま、ありがとうございます。この場を借りて御礼申し上げます。 


ほんの少しご協力した新刊書2冊

9月上旬のある日、机の上に春秋社から私宛に贈呈本『鳥を読む 文化鳥類学のススメ』(細川博昭著/2023年6月刊)が届いていました。——何を隠そう、私は大変な鳥好きで、野鳥の観察や撮影、バードカービングなどを趣味として、鳥にまつわる文化についても収集に余念がないのです。春秋社さんはどうしてこのご本を?と驚いてお手紙を読み、ドイツ製カッコウ笛のことで、ほんのちょっとだけご協力されていただいたことを思い出しました! 
本書には私たちの身近に暮らす鳥たち生態と人間との関わりが記され、鳥をめぐる歴史的、また文化人類学的な考察が楽しく綴られています。細川博昭さんの書には『鳥と人、交わりの文化誌』や『江戸の鳥類図鑑』などがあります。――これらは、鳥の玩具や造形を見ていくときに、いくつもの視点を与えてくれる興味深い書籍です。

さらに先日は、岩波書店から小包が届きました。開封すると『マトリョーシカのルーツを探して「日本起源説」の謎を追う』と題する書籍が現れました。――まぁ、嬉しい! どうして岩波書店さんは、親切にも興味深いテーマの書をお送り下さったのか?!とまたまたびっくりしたのですが、読み進めていくうちに、著者の熊野谷葉子先生から、日本の木地玩具のデザインについてメールでお問い合わせを受け、何度かやりとりをさせていただいたためだとわかりました。
ロシア民俗学者である熊野谷先生の丁寧なご研究に基づいて著された本書は、ロシア民芸や日本の郷土玩具愛好者のますますの関心を喚起するだけでなく、両国の造形文化に楽しく触れることができます。玩具好きの皆さまにはぜひ! そして読まれた皆さまとお話する会などがもてたらいいのに・・・と思います。


つながりのある博物館施設にちょこっとご協力

2017年の神戸開港150周年に当たり、神戸市よりご依頼を受けて、デザインクリエイティブセンター神戸で1年間に亘って開催させていただいた「TOY&DOLLCOLLECTION展」の会場付学芸員として、さらに2018年から2020年3月までの2年間、当館の学芸員を務めておられた原田悠里さんは今、「堺 アルフォンス・ミュシャ館」で力を尽くしておられます。そのミュシャ館では、現在、企画展「モラヴィアン・ドリーム!」を開催中です。
同展の「特別テーマ展示」では、ミュシャが描いたチェコのバレエのポスター「ヒヤシンス姫」の物語に寄せて、チェコ在住の人形作家・林由未さんが制作されたマリオネットの数々が紹介され、また、2021年に阪急うめだ本店のクリスマスショーウィンドゥのために創作された「くるみ割り人形」の世界が再編展示されています。このテーマ展示に、玩具博物館からは、同館から依頼を受けて、ドイツのくるみ割り人形、13件ほどを出展しております。
原田学芸員からは展示風景の画像をたくさんお送りいただきました。美術館展示の格調と❝ディスプレイ❞の楽しさがバランスよく融合して、まさにドリーミーでハートフル! アールヌーボー好きの方も人形好きの方もチェコ好きの方もクリスマス好きの方もぜひ、お訪ねくださいませ。会期は11月26日まで(月曜休館)です。詳しくはこちら→

それから、去る8月、北海道伊達市にある「だて歴史文化ミュージアム」の学芸員Wさんから、同館の「市民コレクション展示」として企画された「クリスマス・コレクション」に、日本製経木モールの画像を出品協力してほしいとのご依頼を受けました。あまり知られていないことですが、戦前戦後、神戸市を中心とする兵庫県のクリスマス産業が日本のクリスマス製品輸出の中核を担い、そのなかの人気商品に経木モールがありました。輸出品であったこともあり、それらの実物は国内にあまり残されていないのですが、2018年、幸いにも当館は「made in occupied Japan(占領下の日本製)」と印字されたベルや星のオーナメントともに、緑、黄、赤の経木モールを入手することが出来ました。だて歴史文化ミュージアムの展示では、当館所蔵の経木モールの画像をまじえ、日本製のクリスマス産業の歴史についても触れておられます。
展示風景を写した画像をW学芸員からお送りいただきました。同館の市民コレクション展示「クリスマス・コレクション」は11月30日までです。お近くの方々にはぜひ、お訪ねくださいませ。だて歴史文化ミュージアムの公式サイトはこちら→

これらことはほんの数例ですが、さまざまな分野の皆さまとのつながりのなかに当館は存在価値をいただき、日々、育てられていくのだと思います。10月の日本玩具博物館も秋らしい取り組みに心を尽くして参りますので、どうぞよろしくお願いいたします。

(学芸員・尾崎織女)

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