新暦桃の節句に | 日本玩具博物館

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学芸室から 2015.03.03

新暦桃の節句に

新井三重子さんのお雛さま

新暦桃の節句、鳥取県日野町で活躍しておられたおもちゃ作家、新井三重子さんの小さな木彫雛を展示室のあちらこちら―――囲炉裏端、小さな喫茶コーナー、生きたお花の傍ら、船箪笥の上―――に飾りました。それらは、新井さんが長野県塩尻にアトリエをもっておられた1990年代のはじめ頃、コブシや椿の上に花の精のように咲くお雛様の愛らしさに打たれて、コレクションとして購入させていただいたものです。
その新井さんが一昨年、62歳の若さで旅立たれたことを、岡山のおもちゃ作家の若林孝典さんから贈呈いただいた追悼作品集『もしも風になれるのならば』を通して知りました。久しぶりに梱包を解いたのは、その追悼作品集に胸を打たれ、小さな祈りの造形とも感じられる新井さんの作品を、またあらためて見つめてみたくなったからです。手のひらで包めるほどの小さな作品群ですが、ご来館者は、囲炉裏端などに小さなお雛さまを見つけて、笑みを浮かべていかれます。それは本当に、優しさがにじみ出してくるようなお雛さまです。ご来館の方々には、ぜひ、目にとめていただければと思います。

「貝合わせ」のワークショップ開催後記

「雛まつり展」に合わせて、去る2月22日(日)の13:30から、6号館2階の講座室「貝合わせ」のワークショップを開きました。

一対の蛤貝の内側に絵付けをして、それぞれに“合わせ貝”を作り、ご参加の皆さんと一緒に“貝合わせ(貝覆い)”の王朝遊戯を再現するもので、この季節恒例のワークショップとして好評をいただいております。

貝合わせは、トランプの神経衰弱に似た遊びと言われますが、実際はかなり違っていて、もっと優雅で、意味の深い遊戯です。一対の貝殻を陽(凸=男性)と陰(凹=女性)に分け、陽の貝を円弧状に並べ置きます。そのまん中にひとつ陰の貝をおいて、もともと一対であった陽の貝を探し合わせます。陰陽の世界観を表現する遊び、夫婦の和合を象徴する遊び、貝の模様から大自然を観想する遊び――そのココロについては多くの解釈がなされています。

様々な世代の方々が夢中で貝殻の中に絵を描いたら、その作品を持ち寄って貝合わせの遊戯体験です。素朴でゆったりとした遊戯ですが、自然物の模様に向き合い、心が穏やかになれるよい時間が流れます。

ワークショップの模様を画像でご紹介いたします。

ご参加下さった皆さま、ありがとうございました。

(学芸員・尾崎織女)

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