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blog麦秋~麦わら細工の季節
●麦秋至の候。「麦秋至―むぎあきにいたる―」は、七十二候のひとつで、5月末日から5日間ほど(2024年は5月31日~6月4日)をさしています。播磨地方の農村部では、食品会社と提携し、組合をつくって麦作を行う農家もあり、また個人で栽培される方々もあり、今、晴れ上がった青空の下に黄金色の麦畑が広がっています。薫風が渡ると、さわさわと乾いた音をたてて麦穂が波打ち、麦秋の喜びに満たされます。
●かつて香寺町あたりでは、麦の収穫後の麦わらを使って、子どもたちは伝承の麦わら細工や麦わらの手遊びを楽しみました。先日、友人から小麦わらをひと抱えほど分けていただいたので、皮や袴を取り除いて整理し、「神輿」と「蛍かご」を作ってみました。
●こちらのページで紹介してみたいと思い、出来上がる過程を写真に撮りました。――まずは神輿。乾燥した麦わらは折れやすいので、数時間以上、水につけて軟らかくしておきます。
❶ 2本の麦わらを十字に組んで、片方の麦わらを下方へ折り曲げます。もう片方の麦わらをしっかり挟むように ❷ T字形の中心の下方を挟むようにして、2本の麦わらを平行に差し入れます ❸ T字形を作っていた最初の1本の麦わらを折り曲げます。差し入れた2本の麦わらそれぞれを挟むように ❹ ❷で平行に差し入れた2本の麦わらと直角に、新たな2本を差し入れます ❺ ❹で新たに差し入れた2本の麦わらを挟むように、先に入れた2本の麦わらを下方へ折り曲げます ❻ また同じように2本の麦わらを入れます ❼ ❷~❻と同じ作業を繰り返します ❽ 神輿の担ぎ棒を2本残して形を整えます ❾ 神輿の下方を整え、麦わらの皮などで結びとめます ❿ 麦わらの下方を切りそろえて出来上がり
●香寺町あたりでは、10月、収穫後の「あぜ豆(枝豆)」の茎を使い、秋祭りの神輿を真似て、子どもたちが手作りしたのですが、❝麦わらでも作ったよ❞と言われる70代、80代の先輩方もあります。麦わらがツヤツヤ、カンボジアのアンコールワットを連想するような美しい造形ですね。あぜ豆の季節にもまた作ってみましょう!
●次は、蛍かご。大きさによりますが、ひとつのかごに、麦の第一節(麦穂がついている部分)30~50本ほどが必要です。複雑に見えて作り方はシンプルです。まずは8~10㎝ほどに切った太めの麦わら(麦の第二節)2本を十字に組み合わせて底を作ります。水に浸して軟らかくした麦わらを十字の先の3ヶ所に1本ずつ、残りの1ヶ所には2本の麦わらを差し込み本を隣の角へ、さらに隣の角へと順番に倒しながら編み進めていきます。
❶ 10㎝弱の太い麦わらを2本準備 ❷ 1本の中心に指の爪で穴を開けます ❸ 穴にもう1本の麦わらを差し入れて十字に組みます ❹ 十字の先、3ヶ所に1本ずつ、1ヶ所に2本、細い麦わらを差し込みます ❺ 2本差した麦わらの1本を折り曲げて二番目の角へ ❻ ❺の角、二番目の角の最初にさした麦わらを折り曲げて三番目の角へ ❼ 三番目の角に最初に差していた麦わらを折り曲げて四番目の角へ ❽ 四番目の角に最初に差した麦わらを折り曲げて一番目の角へ。これで一周しました。 ❾ ❺~❽の作業を繰り返していきます ❿ 折り曲げて角へ麦わらを倒すとき、少し内側へ置きます ⓫ 編む麦わらが短くなったら、その麦わらの孔に新たな麦わらを差し込んでつなぎます ⓬ 角はこのように ⓭ 渦を巻くように麦わらが積み上がっていきます。上から見て、編み口が正方形になるよう丁寧に編みましょう ⓮ 正方形が徐々に小さくなるよう、麦わらを角へ倒すとき、内側へ内側へと心がけましょう ⓯ 編み終わりの麦わらを角の下方へ差し入れます ⑯ それぞれの角に残った麦わらをほどけない程度に切り落とします。1ヶ所は持ち柄として長く残します。太めの麦わらを持ち柄に差し込んで補強するとよいでしょう
●コツがつかめたら、小学生の子どもたちにも十分楽しく編めると思います。編み上がったかごは全体が乾くと、また麦わらの輝きが戻ってきてとても綺麗です。蛍が飛び始めたら、このかごの十字の底からつゆ草などを詰めて蛍狩りへ出かけたいですね。蛍をとらえたら、上方に開けた入れ口から蛍を中へ。たくさんの蛍が入ったかごは、蛍の緑色の光がつゆ草に透けて幻想的。蛍狩りの帰りには、蛍をもとの川原に放ちましょう。あちらこちら抜け穴だらけの蛍かごは、閉じ込める虫かごではなく、束の間、蛍の光を手元で楽しむものなのです。
●麦わら細工の蛍かごにはいろいろな形がありました。底を十字ではなく、3本の麦わらを車輪形にして、6ヵ所に細い麦わらを差し入れて編み上げていくものや、底から卵形に編んでいくものなど。また機会がありましたら編み方を紹介したいと思っています。
(学芸員・尾崎織女)
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