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学芸室から 2014.08.23

麦わら細工の伝承会~播磨地方のホタルかご~   

職場では今週一週間の予定で、博物館学芸員実習生を受け入れています。受け入れ側のキャパシティの問題で、1年に3回、2~3人ずつぐらいがや っとです。入ってもらった以上、4つの課題はこなしてもらい、彼、彼女なりの「博物館観」をみつけてもらいたいと思っています。
今回は、女学生ひとりをお預かりしています。空調設備が整っていないあつ~い館内で、汗をたらたら流しながら、博物館資料に対しても来館者に対しても、一生懸命な彼女です。思い出を残してあげようと写真を撮ったら、背筋も手もピンと先まで伸びていて、後ろ姿に彼女の誠実と真剣が表れていました。昨日は、常設展の「草花遊びのコーナー」をリニューアル。パネルやキャプションなども作り直し、同じ展示資料でも、配置の仕方、グルーピングの仕方によって、違った見せ方ができることを学んでいただきました。

学芸員実習生、新収蔵品の登録作業中です

さて、7月23日(土)は、午後から、実習の学生さんと一緒に、麦わら細工の虫かご(ホタルかご)づくりの伝承会を開きました。

播磨地方の「麦わら細工のホタルかご」

私たちが暮らす瀬戸内地方の村々では、昔、麦秋になると、子どもたちは、農家の人たちから麦わらをもらって、ホタルを入れるかごを編みました。まるで貝がらのような形のかご。
麦わらは、皮をむくと、きらきら光ったきれいな茎が現われます。かわいたままではポキポキとおれるので、ひと晩ぐらい水につけてやわらかくします。10cmほどに切った2本の麦わらを十字に組み合わせ、十字の先にある4カ所それぞれに麦わらを差し入れて、編み上げていきます。難しそうに思えますが、編み方をおぼえてしまえば、案外簡単。
麦わらのホタルかごを作った子どもたちは、ホタルの飛びかう夜を待ちます。そして、十字に開いた底の部分から草をつめ、ホタルがりに出かけました。暗い夜、ホタルをたくさん入れた麦わらのかごは、まるでランプのように明るく光って綺麗でした。

皮を剥いて整えた麦わらをぬるま湯につけてやわらかくしているところ

麦わら細工のためには、1本1本、麦わらの皮を剥いて下処理をしなくてはなりません。多くの方々に体験してほしいので、約1カ月、夜なべを続けて、3千本の麦わらを準備しました。今年は雨が多かったせいか、麦わらが黒く傷んでいてあまりいい状態ではなく、実習の学生さんに伝授すべく、一緒に編んでみたのですが、いつもより少し粘り気の少ない麦わらです。小学1年生から70代のご婦人まで多くの方々の参加申し込みを伺っていますが、皆さん、この麦わらにうまく親しんで下さるでしょうか。最後まで根気強く編み進めて下さるでしょうか。講座前日になってとても心配になりました。

麦わらがいつもよりかたくて…うまく編んでいただけるか、心配。。。

果たして――、一昼夜、ぬるま湯に浸け置いた麦わらでしたが、やはり、少し硬くて折れやすい…。作業には根気を要しましたが、小さい子たちはお母さんと一緒に、小学中学年以上の子たちは、いつしかコツを覚えて、どんどんと編み上げていかれるではありませんか! 「ちょっと難しかったけれど、こんなに綺麗な形になるなんて、すごくうれしい!」「麦わらがこんなにおもしろいものとは!!」「麦わら細工にはまってしまいそうです!!」――そんな声もたくさん聞かれ、楽しい伝承講座となりました。家でもうひとつ作りたい!!」と机の上の余った麦わらを束にして持って帰られる方々も多く、素朴な手作業ですが、自然のものに向き合って手を動かす喜びを体験していただけたんだなぁと、とても嬉しく思いました。
伝承会の風景を画像でご紹介いたします。

みんなうまく編めました!!

ご参加下さった方々、どうもありがとうございました。

(学芸員・尾崎織女)

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