日本玩具博物館 - Japan Toy Musuem -

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学芸室から 2013.12.01

憧れのヘクセンハウス! 

朝夕はぐんと冷え込むようになり、玩具博物館の庭の樹木の紅葉、黄葉が美しい季節です。本日よりクリスマス・アドベント(待降節=クリスマスを待つ時節)を迎え、当館恒例 の「世界のクリスマス展」をお訪ね下さる方々で館内はとても賑やかです。

ご家族連れの関心をひいているのが、「クリスマスの菓子とオーナメント」のコーナー。チェコやセルビア、ドイツ、フランスなどのパンやお菓子で作られた伝統的なツリー飾りが展示されているからです。

ガラスや木、プラスチックから作られたツリー飾りを見慣れていると、お菓子や食べ物がツリーに飾られるというのは、とても新鮮でめずらしいことのように思われるかもしれません。けれど、昔々、クリスマスのモミの木に初めて吊るされた飾りものは、工業製品ではありませんでした。

パン細工のオーナメント(チェコ)

パンの文化史研究者でクリスマス菓子のご研究でも知られる舟田詠子先生のご著書『誰も知らないクリスマス』(朝日新聞社/1999年刊)によると、18世紀後半のドイツで、クリスマスツリーに吊るされていたものは、木の実、林檎、レープクーヘン、色紙、金箔飾り(ティンゼルのことでしょうか)、梨、オブラーテン(=ホスチア)など、食べ物に関するもの。ゆすって落として食べられるもの。豊かな実りを象徴するものでした。

麦わらやきびがら(トウモロコシの皮)なども、穀物霊のやどる素材として、やがてここに参加していくものと思われます。フランスのアルザス地方では、姫林檎の実らなかった年に、ツリーに飾る姫林檎を求める人たちのため、吹きガラス職人が赤いガラス玉を作って、歓迎を受けたのだとか。私たちが親しんでいる様々な飾りものは、吊るすべき食べものの代用品として発達したとも考えられますね!

麦わら細工のオーナメント(スウェーデン)

先日は、その「クリスマス菓子とオーナメント」のコーナーの主役になるような素敵なプレゼントをいただきました。
それは、ドイツ菓子のマイスターの手になる「ヘクセンハウス」で、菓子文化の研究者である三久保美加さんからの“日本玩具博物館・世界のクリスマス展”へのプレゼント。

ドイツのヘクセンハウス(ドイツ菓子のマイスター・アウスリーベの曽根愛さん作)

*「へクセンハウス(魔女の家=『ヘンデルとグレーテル』のお菓子の家)」は、ドイツのクリスマスにはなくてはならないものです。ヘクセンハウスの屋根には、レープクーヘン、マシュマロ、キャンディケーン、チェコレート、マルチパン、グミなどがいっぱい!もちろん、全部、食べられます。子ども時代の見果てぬ夢が実現したかのような、その嬉しい姿は、子どもたちばかりか、立派な社会人となられた大人の皆さまの口元をもほころばせる力をもっているようです。

「ヘクセンハウス」は、「ツヴェッチゲンメンレ」と呼ばれる胡桃とプラムの人形――ドイツのクリスマスマーケットの定番です――の傍に展示していますので、ぜひ目をお留めくださいますよう! 

「クリスマスの菓子とオーナメント」展示コーナー

(学芸員・尾崎織女)

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