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学芸室から 2018.09.01

おもちゃ館の夏休みその2の1 “経木モール”を探せ!

 夏休み終わりですね。。。おもちゃ館では、秋冬の企画展「世界の伝承玩具」(9/15~2019/2/19)と今年で34回目を迎える冬の特別展「世界のクリスマス」(10/20~2019/1/20)の準備で季節を先取りしております。


日本製クリスマス飾り“経木モール”を探せ!
 この酷暑にクリスマス??と、お思いかもしれませんが、博物館の重要なお仕事のひとつ、資料調査のお話です。当館恒例の冬の特別展「世界のクリスマス」では本場ヨーロッパを中心に主に世界各地のクリスマスの習俗をご紹介してきましたが、改めて日本でのクリスマスにも目をむけて、その広がりを探るべく、この夏、日本のクリスマス産業の歴史について尾崎学芸員とともに聞き取り調査を開始いたしました。

ドイツの経木細工のオーナメント

実は兵庫県は戦前から戦後を通して、神戸を中心にクリスマス産業が発展してきた土地。明治40年代ごろから多くの日本製のクリスマス製品が北米を中心にヨーロッパ各国にも輸出され、居留地の外国人商人とも取引を行っていたようです。
その日本製クリスマス製品の原点を探っていると、“経木モール”というものにたどりつきます。経木は、桧材や松材を紙のように  薄く削ったもの。よくたこ焼きの容器になっている薄い舟状の板を想像していただけたらわかっていただけるのではないでしょうか^^経木のオーナメント、と言うと、ドイツにも光のモチーフにしたオーナメントがありますが、これはモールとは言いづらいもの・・・

木材が豊富な日本、経木製品自体は明治から昭和初期にかけて全国各地で作られ、織物や笠などの民芸品や食品の容器、包装材料として身近に使われてきました。
そんな経木製品の一つにクリスマスツリーに飾るガーランド、“経木モール”がありました。明治から昭和初期にかけて経木製品を盛んに作っていた兵庫県柏原(かいばら)町の『柏原町志』(1955)によると、明治40年頃、岸本幸三は外国向けの装飾品として経木モールを製作したところ、外商の好評を得て海外からの多量の発注が来たということが書かれています。柏原の経木を神戸で染色、加工して“経木モール”“莚モール”をクリスマス飾りとして輸出していたというような資料もあります。

こうなると気になるのはこの経木モール、実物はどのようなものだったのでしょうか。実は経木モールは、これです!と言える写真や図など、その造形を示す資料をわたしたちの館では見つけられておりません。博物館としては、やはり、実物資料を収集しておきたいところです。神戸市内のクリスマス飾り製作や柏原町における経木モール製作については、昨秋、神戸芸術工科大学の相澤孝司先生から非常に興味深い情報を頂戴しました。相澤先生からご教示いただいたお話を参考にさせていただきながら、経木モール調査の旅へ――――そのお話は次回につづきます。

(学芸員・原田悠里)

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